冷えとり靴下に、穴があいた。
足には身体の様々な部位のツボがあり、弱っていたり疲れている部位のツボから毒素が出て、シルクを溶かし穴があくのだと聞いていた。これは、治癒の過程で不要なものを排出する瞑眩(めんげん)という症状なのだそうだ。
ほんまかいなと疑心半分興味半分でいたのだが、つま先やかかとのような擦り切れやすい場所ではなく土踏まずにあいたので、まさしく瞑眩なのだろうと調べてみた。土踏まずは、腎臓のツボだった。毎年健康診断は受けていて異常はないのだが、不安になる。
しかし、穴のあいた場所をよくよく見て、あっと声を上げた。
「左の土踏まず。怪我をした場所だ!」
ひと月ほど前、無花果を採りに来ないかと突然誘われ畑に入った。不用心にも裸足にサンダル。無花果の実に気をとられていて小枝を踏み、器用にも土踏まずに刺してしまった。けっこう血が出て痛かったので、深く深く刺してしまったかといつになく動揺した。だが傷はそう深くもなく、消毒し軟膏を塗りバンドエイドを貼ったのは1日だけで、その後は放っておいた。それを、冷えとり靴下は見逃さなかったのだ。
「冷えとり靴下もすごいけど、身体ってすごいなあ」
わたしがすっかり忘れてからも、傷をしっかり治そうと、悪いもの、不要なものをせっせと排出してくれていたのだ。
「もうちょっと、大切にしてくださいな」
そう言われたような気がして、サボっていた体操をにわかに再開した。
洗いざらしで失礼します。3足を使いまわしています。
ほんとうに傷と重なる位置に、ぽっかりと。不思議。
穴があいたのは4枚重ねて履くうちの1枚目のシルクです。
この夏は冷えとり靴下のおかげか、足をつることがありませんでした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。