クリスマスからお正月にかけて年初めに旅したポルトガルでひとつ、自分のために買ったものがある。
コルク製のケースだ。
薄くやわらかいペンケースにも使える細長いもので、老眼鏡を持ち歩くのにぴったり。木肌の違うコルクが組み合わせてあり、すっきりとしたデザインで気に入っている。
ポルトガルを旅して知ったことのひとつに、コルクのことがある。
ずっと木を粉砕して固める過程で弾力が出るようにした加工品だと思っていたのだが、違っていた。
コルクは、もともと弾力があるコルクガシの樹皮で、高温蒸気処理をすると弾力や伸縮性が増し、加工しやすくなるそうだ。
くり抜いてワインの栓にするほか、楽器の接合部分や、野球の硬式球の芯、バドミントンのシャトル、釣り竿のグリップなどにも使われているらしい。
加工品は、加工されるその工程を見ることがない。
その知らない工程部分を想像の外へ押し出し、知っている部分だけで構成しようとする癖がついているのかも知れない。
コルクは、思ったよりずっとアナログなものだった。
10年に一度、樹皮を剥ぐが、最初のバージンコルクは硬くてワイン栓にもならないそうだ。
コルク畑を親から受け継ぎ、子供に渡す。
自分が生きているあいだだけではなく、次の世代のことを念頭にコルクガシを守っていく。
世界中のコルク生産の半分以上を担うポルトガルでは、そんな大きな時間が流れている。
コルクの木肌や色合いを活かしたケース。
老眼鏡ケースにぴったりで、いつも鞄に入れています。
アレンテージョ地方のレンタカーで走ったコルクガシ並木の街道。
木の皮を剥いだ跡に数字がかいてあるのは西暦の右1文字だそうです。これは2018年かな。10年ごとに皮を剥ぐそうです。
この厚みがコルク製品に使われるんだね。茶色い方は硬く、白い方をさわると弾力がありました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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