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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

セーラームーンの記憶

ふと思った。今暮らしている家には、輪っかになった蛍光灯はないなと。

 

今でも、たまに思い出しては可笑しくなる。あれは末娘が生まれて間もない頃だった。6歳の息子、4歳の娘、そして生まれたばかりの末娘。

夕方3人を風呂に入れるのが日課だった。幼い子どもがいる家ではどこも同じような時間を過ごしているのだろうが、会社を興したばかりの夫は帰りが遅く、その日課はわたしひとりの仕事だった。そんなある日、赤ん坊の末娘を風呂に入れていると、先に風呂に入れた4歳の娘が風呂場のドアを開けた。

「ごめんなさい」

見ると、裸足の足が血だらけだ。

「どうしたの?」

そう聞くなり、泣き出した。

「セーラームーンごっこ、してて」

一瞬で理解した。その頃彼女が夢中だったセーラームーンの真似をして、思いっきりステッキを振ったのだ。居間の蛍光灯の真下で「セーラームーン!」と、その決め台詞を呪文のように叫びながら。

居間に散らばった輪っかの蛍光灯の破片。それを浴び、さらに裸足で踏んづけて血を流している娘。用意しておいた風呂上り用の赤ん坊の服もその破片を浴びている。何ごとかと居間に来て惨状を目にした息子。そして、首の座らない裸の赤ん坊を抱いた濡れネズミの裸の自分。

 

記憶というものは不思議なもので、そこから先は覚えていない。

このときのことは笑い話として、その後、両親に友人に、さらには娘本人にも何度も話した。そのあいだに記憶は川を流れる尖った石のように角を削ぎ丸く小さくなり、残ったのは心地よい笑いの部分。そして女の子女の子していたお茶目な娘の可愛らしさと、子どもの行動の予測不可能なことと、若き母親のパワーと。

 

記憶は塗り替えられていく。だが、たいへんだったり辛かったりした部分を削ぎ落とし、温かな部分を残し変えられた記憶は、それはそれで本当なんじゃないかなとも思う。かえってその方がいいのかも知れないなあと最近では思うのだ。

CIMG3116我が家の照明のなかでもとても気に入っている玄関のライトです。蓮の葉の向こうに電球があり、間接照明的な感じになっています。友人の鉄刻屋さんにリクエストして作ってもらいました。

CIMG3120蓮の花と蕾、そして葉をデザインしたものです。

CIMG3122真横から見ると、小さな電球が見えます。

COMMENT

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  1. ユミ より:

    あらら~、遠い昔の事だったにしろ、大変でしたね~
    私は今、聞いたばっかりだからヒェーッ!って感じで、それからさえさんどうしたんだろう・・・
    ってすごく現実的に心配しています。
    さえさんの記憶が笑い話に塗り替えられていて、良かったです。

    玄関の電球、正面からだとなかなか構造がわからなくて・・・
    横から見てやっと、なるほどね~と納得です。
    素敵です!!

    • さえ より:

      ユミさん
      ヒェーッ!でしょう(笑)
      ほんとにまったくその後のことは記憶にないんですよ~
      子育て中は、きっとみなさんいろいろあったんでしょうね~遠い日の思い出です♡
      蓮の花のライト、とっても気に入っています。可愛すぎないところもいいでしょう?
      鉄刻屋さんには、表札や引き出しと戸棚の取っ手も作ってもらいました。
      表札は、外にあるので雨ざらしなんですが、それを利用して錆びた部分にローマ字の名字が黒く浮き出るようにしてもらいました。

  2. papermoon より:

    さえさん、こんにちは!

    輪っかになった蛍光灯、懐かしいです。
    昭和の時代にはどこの家にもありましたよね。

    娘さんの怪我、大変でしたね。
    当時は結構深刻だったことでも今では笑い話にできることに時間の流れを感じます。
    我が家でも娘がコンセントにヘアピンを突っこんで感電したりとか道路で転んで額がパッカリと割れたものの縫うこともなく、傷口が閉じてしまったこととかいろいろあるのですが、今ではさえさんち同様、笑い話になっています。
    遠い日の思い出という表現が一番合ってるような気がしますね。

    蓮のライト、すごく素敵です。
    電球が隠れているというのがいいですね。

    • さえ より:

      papermoonさん
      輪っかの蛍光灯、すでに昭和のレトロなグッズになってしまったんでしょうかねえ。
      まだまだそんなに古いものじゃないと思っていたのに、実際に我が家にもないので流行らないっていうのはわかりますが。
      それにしてもpapermoonさんも大変な思いされていますね・・・
      感電! それに、額がぱっかり!
      大事に至らなくてよかったですね。遠い日の思い出ですねえ、ほんと。
      蓮の花のライト、素敵でしょう♡ありがとうございます♩

CIMG2876

PROFILE

プロフィール
2016-10-02-11-07-59-1
水月 さえ

随筆屋。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

夫が営む広告会社で経理を担当。

2012年から随筆をかき始める。

 

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。

 

随筆かきます。

依頼はメールフォームからお願いします。

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