平仮名の「あ」が、かけなかった。
小学校に上がる前のことだ。
大人になった今では、平仮名など小学校に上がってからかけるようになればそれでいいと思う。だが、自分の名字の頭に「あ」の字があった5歳のわたしは、何度かいても「あ」の字にならない鉛筆の曲線を恨めしく眺めたものだった。
大人になり地図が読めず方向音痴であると自覚するわたしは、その頃から見たままに線をたどるのが苦手だったのだと俯瞰する。
先週、手話サークルで行った桃のお花見ツアーでのこと。ランチでの会話は、手話も使う。手話サークルで勉強を始めて1年経つが、いまだ初心者のままで、先輩方に教えてもらいながらでしか、思っていることを伝えることができない。それだけでも落ち込んだのだが、今教えてもらったばかりの同じ手話を使おうとして違うと何度も指摘されてしまう。
「毎日」という手話は、親指と人差し指を立てて回すのだが、回す方向がいつも逆になってしまうのだ。やってもらって見ては真似して、しかし見ながらでもなかなかできない。「あ」がかけなかった5歳の自分に逆戻りした気分だった。
だけど、と思う。
今、わたしは「あ」がかける。「毎日」だって、いずれ覚えられるだろう。
たぶん。
手話サークルで行った桃のお花見ツアー。今年は花の開花が早く、桃の花も終わっていましたが、花桃と八重桜は花盛り。楽しかったです♩
農カフェ『hakari』でのランチでした。
ちらし寿司など華やかな「hakariプレート」です。動物性のものは一切使っていません。美味しかったし、お腹いっぱいになりました。
これが手話の「毎日」。この「後回り」とか「前回り」とかが曲者で、どっちだったっけ? ってわからなくなってしまうんです。
☆『地球の歩き方』特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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