多くの声が響く場所で、自分が欲している情報だけを拾い集める能力を「カクテルパーティ効果」と呼ぶそうだ。

パーティーなどで大勢が思い思いに雑談しているなかにいても、興味のある会話や自分の名前などは、声の大きさの違いなどがなくても自然と耳に入ってくる。

人には、そういう本能的な能力が備わっているらしい。

耳だけではなく、視覚的にも同じことが言える。繁華街に立ち並ぶ多くの看板から、興味のあるもの、見知ったものだけが目に留まる。

嫌いな人の声ばかり耳につくのも、結局は関心があるということだ。

人間はそうやって、知らず知らずのうちに自分が欲する情報を選びとっているという。

わたしは、テレビが苦手だ。

ドラマや映画を観るのは好きだが、ずっと流しておくということができない。たぶん多くの情報が入ってき過ぎてパンクしてしまうのだと思う。

人に備わったカクテルパーティ効果は、より効果的に使える人がいる反面、ほとんど使えない人もいるそうだ。

人混みもパーティも苦手、テレビもラジオもつけっぱなしにして聞き流すことができない。SNSにマメに投稿することもできない。しんとした時間が好き。そんなわたしは、カクテルパーティ効果をあまり使えないタイプなのかも知れない。

世のなかには今、情報があふれすぎている。そこから必要な情報だけを選別することはとても難しい。

難しすぎて、ときに思う。

目を閉じて、耳をふさぎ、心を閉じて、丸一日くらい何も考えずしんとした心持ちでいられたらと。そんなふうに思うのは、わたしだけだろうか。

ふらりと庭に遊びに来たオオムラサキ。

紫陽花の花にたたずむけろじ。

道端に咲く山百合。