車でコンビニまで走る途中、違和感を覚えた。
右太もも下、ジーンズのなかにかゆみを感じる。
コンビニに車を停め、恐る恐るジーンズの上から触ってみると、はっきりと何かが入っているのがわかった。大きさで言うと小さめのカナブン大だ。
そう思った途端、ジーンズを膝まで脱いでいた。コンビニの駐車場はいっぱいだったが、運転席側の隣りの車には人は乗っていなかった。確認したのはそれくらいだ。のぞきこむ人はいないだろうが、知人に会う可能性も高い場所で、あとから考えると冷や汗が出る。
しかし、ぽろりと落ちたのはカナブンではなかった。外れたジェルネイルだった。ネイルの端が皮膚に食い込みかゆみを覚えたのだろう。
「なーんだ」というオチである。
驚いたのは、トイレにも行かずすぐさまジーンズを脱いだこと。しっかりオバサンなのはわかっているが、それでも多少はあると思っていた恥じらいはどこへ行った? いくら車のなかだとは言え、虫ごときでそこまで慌てるか?
映画で似たシーンがあったなあと、思い出す。
ダイアン・レインの『トスカーナの休日』だ。
越してきたばかりのトスカーナで、窓辺で外を眺めていたらタンクトップのなかにサソリが入りこみ、慌てて脱ぐと、道を歩いていた老紳士に露出狂だと思われちゃうんだったか。
偽カナブンじゃ、漫画にもならないな。とほほ。
新しいネイル。薬指だけブルーのアートにしました。宇宙を思わせる感じ?
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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