母の日の前日、上の娘からプレゼントが届いた。
ピンクを基調にしたプリザーブドフラワーだ。やわらかなピンクが、目にまぶしい。優しく和やかな気持ちになる。
お約束のメッセージ「母の日おめでとう」も、ちゃんとついていた。
その夜、ちょうど夕食を終えた頃、突然停電した。
夫が電池式のライトを出し、ふたりスマホで情報を探すが、東京ならまだしも山梨の田舎で停電したくらいじゃニュースにもならず、何も得られない。
「どうする?」
「どうしようもないね」
食後に仕事をするはずだった夫も、あきらめモードだ。食事も風呂も終えたし、ライトもある。特別に困ることはなかったが、やろうと思っていたことはできない。
テーブルを見ると、プリザーブドフラワーが弱い光のライトに照らされている。きれいだ。明るいなかにあるのとはまた違い、静かな落ち着きを満たしている。
ふともう今夜は何もせず、こうしていればいいかなと思えた。
それから30分くらいして、電気がついた。市内の変電所の故障だったらしい。
夫は予定通り仕事をし、わたしは洗い物を済ませ、ベッドライトをつけて本を読んだ。もしあのまま停電していたら、どうしていただろう。
ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』を思い出す。
子どもの死産がふたりの関係に暗い影を落としていた。夫は、それで壊れるようなことはあるまいと思いながらも、妻とすれ違っていく自分を俯瞰している。そんなとき5日間、夜の8時から1時間、停電になるとの通知があった。
「そうしましょうよ?」いきなりショーバが言った。
「どうするって?」
「何か言いっこするのよ、暗い中で」
「たとえば? おれはジョークの持ちあわせなんかないぜ」
「そういうのじゃなくて」と、しばらく考えてから、「いままで黙っていたことを言うなんてのは?」
停電の夜、何をしますか?
こんな包みのなかに、入っていました。
可愛い~♩ 居間のテーブルに飾って楽しんでいます。
プリザーブドフラワーって、とっても軽いんですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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