まだ11月だというのに、雪が積もっている。東京では11月に雪が降るのは54年ぶりだそうだ。なんとわたしが生まれた年である。
山梨に越してきてからは、雪を見ても手放しに、ああ、きれいとは喜べない。
「うわー。スタッドレス、まだ履いてないのに」
「今週末は、ガソリンスタンド混むだろうなあ」
「下る?それとも、ちょっと遠回りになるけど、上の道走った方がいいかな」
「うーん。まだ凍ってないから、下ってみようか」
きれいだと見とれる前に、作戦会議となるのだ。
しかし初雪が降ったきのう、朝7時に夫を駅まで送ってから、もう車は動かさないと決めた。ちょうど家にこもって仕事に集中する日だったのだ。
そう考えた途端、そぼ降る雪は、ひらりひらりとのんびり舞う、この上なく美しいものに見えてきた。
「雪の結晶は、六角形なんだよ」
小学生の頃、友達が教えてくれたのを思い出す。
「平たいんだね。だから、ひらひら舞ってくるんだね」
そんな会話を交わしたからか、わたしのなかで雪は折り紙を切って広げたような平らな六角形なのだ。小さな小さなパラシュートのイメージだと言ってもいい。
「初雪くらい、楽しもう」
珈琲を淹れるのも忘れ、ひとりゆっくりと庭を歩いた。ふわり、ふわりといくつもの六角形のパラシュートが、舞っては積もっていった。
朝8時のウッドデッキです。カーテンを開けてびっくり。
もみじです。赤く紅葉した葉に、雪の白が映えます。
雪柳は、その名の通り花を咲かせたようです。
ヤマボウシ。すっかり葉を落として眠ろうとした矢先。
ヒイラギ。雪が似合う葉っぱですね。
南天。赤い実が、雪ウサギの目を思わせます。
ゼラニウム。足もとで赤く染まっていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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