CATEGORY

BACKNUMBER

OTHER

はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

冬の使者

玄関のチャイムが、鳴った。

「こんな時間にだれだろう?」

朝の8時である。ところが、玄関に出てみると誰の姿もない。

「あれ?まさか、ピンポンダッシュ?」

子どもの悪戯かと一瞬考えたが、悪戯しそうな子どもたちはこの辺りにはいない。いたとしても学校に行っている時間だ。

可笑しいな、と首を捻ってチャイムを見つめていると、ふたたびチャイムが鳴った。押した人はもちろんいない。しっかり見つめていたのだから野鳥や動物などの可能性もない。狐につままれたような、というのはこういうときに使うのだなと意味もなく考えるも何か気味が悪い。恐る恐る自らチャイムを鳴らしてみた。だが、今度はうんともすんとも言わない。

「なんだ、壊れたんだ。さっきのは、蝋燭の最後の炎だったのか」

自分を納得させるために、そう考えることにした。

 

さて、それが一昨日のこと。

山は吹雪いて冬の顔をしていた。強い北風が八ヶ岳から吹いてくる。本格的な八ヶ岳おろし第1号だ。その日出かけた東京でも、木枯らし1号が吹いた。

「突然、冬が来たみたいに寒いね」「凍るねえ」

友人と話しながら、東京の街を歩く。

「八ヶ岳おろしは、もっと冷たかったよ」「でしょうねえ」

 

そしてきのう帰って来て、チャイムが鳴るのを確認して夫に言った。

「チャイム壊れてたの、直してくれたの?」

「いや。何もしてないよ。鳴るじゃない音」

それではいったい、あのチャイムは何だったのか。

チャイム〈鐘〉を鳴らすことの意味は、2通りあるという。

教会の鐘のように、時間などを「知らせる」鐘の音。

そして除夜の鐘のように、過ごしてきた時を断ち切り新しい時へと移行する「空気を変える」役目を持つ鐘の音。

八ヶ岳が、冬の使者を知らせに走らせたのだろうか。あるいはわたしは、秋から冬へと空気を一新する瞬間に立ち会ったのだろうか。いずれにしても、八ヶ岳から雪が舞い下りてくる日は、すぐそこに迫っている。

cimg1615一昨日の朝の、南アルプスは甲斐駒ケ岳です。

cimg1612アップにすると、雪が見えてきそうです。

cimg1607八ヶ岳も、雪雲に覆われていました。

cimg1617冷たい雪が舞っているのが、伝わってくるようです。

cimg1609山はもう、凍っているんですよね。

cimg1657雲が晴れたきのうの八ヶ岳。最高峰の赤岳です。

cimg1655権現岳も、すっかり冬の顔をしていました。

COMMENT

管理人が承認するまで画面には反映されません。

CAPTCHA


  1. Yasuko より:

    「冬の使者」タイトルも素敵なら冷たい冬の気が迫ってくるような文章にうなってしまいます。
    朝8時、玄関のチャイムが鳴った。誰もいないのに。
    「八ヶ岳が冬の使者を走らせたのだろうか。あるいはわたしは、秋から冬へと空気を一新する瞬間に立ち会ったのだろうか。いずれにしても、八ヶ岳から雪が舞い降りてくる日は、すぐそこに迫っている」
    甲斐駒のアップ、八ヶ岳と雪雲、墨汁たっぷりに描いたような権現岳などの映像と共にずしんと胸に迫ってきて何か一言、が叶わず、どうしたものか・・・と。
    そうだ「はりねずみ賞」なんかいかがかしら?

    • さえ より:

      yasukoさん
      不思議でした。ほんと。
      誰もいないのにチャイムが鳴った瞬間は、ぞくりとして怖かったんですよ。
      山々がきれいな季節になりました。毎日薪を燃やして暖をとっています♩
      yasukoさんも、温かくしてお過ごしくださいませ。

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

ご意見などのメール

CATEGORY

カテゴリ

BACKNUMBER

バックナンバー

CALENDAR

カレンダー
2024年4月
« 3月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

COPYRIGHT © 2016 HARINEZUMIGA NEMURUTOKI. ALL RIGHTS RESERVED.© 2016 HARINEZUMIGA NEMURUTOKI.