鍵を探していた。スーツケースの鍵である。
年が明けてすぐに、パリで暮らすイザベルから結婚式の招待状が届いた。
5年前に2週間、我が家にステイしたパリジェンヌだ。
イザベルの友人である上の娘とも相談し、またとはない機会だし、夫と娘と3人で出席することにした。花嫁となるイザベルに会うのも楽しみだが、パリ郊外で行われるという結婚式も楽しみだ。少しずつ準備を進め、「ご結婚おめでとう。お幸せに」というフランス語も覚えた。パリは2度目だし、スペイン北部のアートの街ビルバオに足を伸ばそうと計画も立てた。
さて。スーツケースの鍵である。
キッチンカウンターの上にホックが並んだキーホルダーがあるのだが、ひとつしか見つからない。鍵をかけてスーツケースが開かなくなってしまったらと思うと不安だ。合鍵もぜひ持っていきたい。
「ないなー。なんで、ひとつしかないの?」
ぶつぶつ言いながら探した。そして、はたと気づいた。
「そう言えば、前にも同じことが」
ホルダーの下に置いたペン立てのなかに落ちていたことがあったのだ。
「あった!」
やはり鍵はペン立てのなかに落ちていた。
まるで隠れているかのように、こっそりと収まっている。以前「常識にとらわれず推理した経験」から、鍵は見つかったのだ。そして考えた。
「これ、ペン立ての位置、ちょっとずらせば起こらない事件なんじゃない?」
以前は推理したことで満足していたわたしだが、今回は鍵なくなり事件を未然に防ぐための行動を起こすことにした。
いくら歳を重ねても、学習し成長できるのだ。
なーんて言うほどのことじゃないけれど、そう思っていたいよね。
ペン立ての上に、キーホルダーがあります。雑然としたキッチン(笑)
町は今、夫の写真と同じく田んぼに風景が映り込む季節です。
普段はしない腕時計の電池を交換して、出発です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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