「あれ、どこだったっけ?」
唐突に、夫が言った。
「ほら、天井に布が張ってあるホテル、あったじゃない」
「ああ、あったねえ。白っぽい布。食堂の上だっけ?」
「そうそう。あれ、やろうかと思うんだけど」
「えっ、どこに?」
「居間の吹き抜け。暖気が2階に逃げないように」
「おー、なるほど」
というわけで、居間の吹き抜け部分に、布を張った。
ユザワヤで4m近い生成の布を買い、画鋲で停めただけの簡単仕様だ。
不思議なことに、これだけのことだが暖かさが違う。空気は目に見えないけれど、これまでも自由に1階と2階を行き来し、暖かなものは上へ上へと上っていたのだ。
布を張って、上へ上へと上ろうとする空気がこつんと布に当たり、すごすご引き返してくるのが見えるようで、見上げては笑っている。
「ところで、あのホテル、どこだったっけ?」
「グラナダかなあ」
「いや、そんなに昔じゃないと思う」
そう言いつつ夫が、写真を見つけてきた。2年前のイタリアの旅。シチリア島のパレルモのホテルだった。「ああいうのがあった」ということは覚えていても、「いつどこで」がなかなか思い出せないお年頃である。
こんな感じです。写真を撮るには、窓の光が明るすぎました。
横から見ると、ハンモックのよう。
船の帆のようにも見えますね。ヨーソロー!
薪ストーブくんが、横目で見ていました。
パレルモのホテルの写真です。photo by my husband.
☆パレルモの旅レポも、よかったら、どうぞ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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