運転中、不意に時間の流れがちぐはぐになった。
まえのまえを走る軽トラがゆっくりすぎる速度で走っていて、まえの軽が抜きあぐねている。田舎道には渋滞はないが、こういうことはままある。しょうがない、と他の道にそれると、そこにもゆっくり走る軽トラが待っていた。それを3度繰り返し、自分のなかに流れる時間の感覚がつかめなくなったのだ。
時間制限がないときならまだしも、ヨガの教室に向かう途中で、余裕を持って出てきたはずの余裕が削りとられていく。
こういうときこそ、気をつけなくてはいけない。
急ぐことが苦手で、いつも秒針より微妙に遅く進んでいるわたしの時間。それが不意に、秒針の前を走っていることに気づき慌てる。見えなくなった秒針に、時間の感覚がまったくわからなくなるのだ。停滞しているかのようにも思えるし、猛スピードで過ぎていくようにも思える。しかし慌てて元に戻そうとあせると、ろくなことはない。ただ運転に集中し、気をつけるのみだ。
けっこう長く生きてきたので、時間の流れを戻す方法は、いくつか知っている。ひとつは、気が抜けるような音楽をかけること。車のオーディオを、夫が聴いていたサンタナから、サザンの『バラッド』に変えた。それでもこういうときのちぐはぐさは、あとをひく。いつもの自分と違うペースにハマると、抜け出すのは難しい。ズレた音程で歌い出したときに、上手く戻れないみたいに。
でも、だいじょうぶ。時間にも間に合い、優しいタイプのヨガひめトレのレッスン1時間を過ごすと、ちぐはぐさは消えていた。緩やかな音楽と緩やかな呼吸。ああ、ここにも秒針よりも微妙に遅く進んでいく時間がある。そう思ったとき、時間の流れはすっかりもとに戻っていたのだ。
こうして自分に近いものを集めて、歳を重ねていくのだろう。
好きな食べ物、好きな本、好きな場所、好きな時間の流れ、そして好きな人。そうやって大人も、自分を育てていくのだ。
ヨガ教室の会場の妙善寺です。ゆったりとした気持ちになるのはお寺だから、ということもあるのかも知れません。
立派な鐘もあります。
お庭には、果林の木がたくさん実をつけて、いくつも落ちていました。大きな実です。優しい淡い黄色ですね。
トイレの写真で失礼します。よくトイレでお香、炊くんです。てんとう虫と葉っぱのお香立て。お香を焚くと、時間の流れがもとに戻る気がします。
同じくトイレに、ツルウメモドキを活けました。可愛い赤とオレンジ色。花を活けるのも、効果的だと思っています。
ウイスキーの樽をリサイクルして作られた時計です。ほかの時計よりもゆっくりと時間を刻んでいるように見えます。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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