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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

男爵と数字の9とビリジアン

母からじゃが芋が届いた。

北海道の親戚から送ってきたという男爵のおすそわけだ。北海道の牧場で育った両親の影響で、わたしも幼い頃から男爵とメークインの違いはよく知っていた。男爵は、蒸かしてバターをのせたりポテトサラダなどにすると美味しいホクホクした食感のじゃが芋だ。さっそく蒸かしてバター焼きにして食べた。バターの塩味がぴったり合っていた。北海道の味だなあ、となつかしくなる。

 

母から何かを送ってきたのは、とても久しぶりだった。
そのせいか、久しぶりに数字の9の話を思い出した。
子どもの頃に、どの数字が好きかという話をしていて、母は9と答えた。その答えが印象的だった。
「9は嫌われ者だから。ひとりくらい好きだっていう人がいてもいいでしょう」
看護婦をしていた母は、病室では4と9を外して数えられていることを教えてくれた。103号室の次は105号室という具合に。4は死を、9は苦を連想するからだ。大人になって常識となったそのことも、嫌われているから好きという発想も、小学生のわたしには新鮮に聞こえた。だから覚えているのだろう。何故4ではないのか、と訊くのも忘れるほどに。

 

母を思い出すときに、頭に浮かぶのは数字の9の他には、色がある。
小学生の頃に色鉛筆にあった緑、ビリジアンという色だ。たぶんその頃に、母がビリジアンのセーターだかカーディガンだかを着ていたのだ。
その色は、9の色としても定着した。わたしのなかでは、数字はそれぞれ色を伴って記憶されている。1は白、2は山吹、3はピンク、4は空色、5は黒に近いグレー、6はブラウン、7は黄緑、8は透明な薄桃色、9はビリジアン。
以前、サヴァン症候群で数学の天才である青年がかいた『ぼくには数字が風景に見える』(講談社)を読み、円周率2万桁を暗唱した彼が、百桁であろうと1であろうと数字は色と形で見えるから覚えられるのだ、とかいていたことを思い出した。彼には9は青だったらしい。
わたしの場合は、母と9とビリジアンが結びついて記憶されているように、たぶんどの数字の色との結びつきも過去に起こった何かが起因しているのだと思う。
今、何色が好きかと訊かれれば、0だ。無色透明な0。透明という強さと、何にでも染まれる柔軟さに魅かれるのだ。

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小さな箱にぎっしり。北広島市の伯母からとメモが入っていました。
北海道の北広島市は、広島県から移住した人が多い街です。

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蒸かして、バター焼きにした男爵芋。新鮮なホクホク食感を味わえました。

COMMENT

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  1. Yasuko より:

     男爵はジャガイモだけに名を残し
    って川柳を思い出します。
    コープの注文にジャガイモも加えたのだけれど、ちょっと無理かと消したところでした。
    指先の力がまだ弱く皮がうまく剝けるかな、と自信がなかったのだけれど、美味しそうですねえ。
    便利に調理されたものをいろいろと美味しくいただいていますが、思いきり何かを作りたいって贅沢なのかしら?

    • さえ より:

      yasukoさん

      コメントありがとうございます。新しいブログへの初コメントで、うれしいです。
      じゃが芋は、洗って皮つきのまま茹でると、皮をむくのが楽ですよ。ポテトサラダも手軽に作れると思います。どうぞお試しあれ。

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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