何年ぶりになるだろう。スーツを買った。

スーツと言っても、きちんとした席に出られるようなものではなく、ちょっとお洒落して出かけたいとき用のカジュアルなものだ。

急に寒いくらい涼しくなったかと思えば、熱中症が心配されるほど暑くなったり、素直には秋らしくなってくれそうにないこの頃の陽気だけれど、洋服売り場にはずいぶん前から秋が来ている。ぶ厚いセーターだってもこもこのコートだって、主役の座を勝ち取り堂々と吊るされている。

スーツは薄茶色の少し起毛したコットンで、トップスは衿なし背中ファスナー。ゆったり目なタイトなスカートには前後4つのポケットがついている。かしこまらずに、気軽に着られそうだ。

この薄茶色、調べてみると「錆利休（さびりきゅう）」と名のついた色に近いように思った。くすみのある渋い茶色を、侘び寂びに通じる「錆」と「利休」の名を重ねてこの色の深みを表現しようとつけられたらしい。色もその名も、落ち着いた雰囲気が秋にぴったりくる。

秋には秋らしく。わざわざそう思って選んだわけではないけれど、自然とだんだんにそういう気持ちになっていく、そんな流れに身をゆだねている自分を感じた。実り多きこの季節ならではの食材や、うろこ雲が流れゆく空や、葉先から紅葉を始めた木々や、心に身体にすでに秋を思いっきり吸い込んでいるのだ。流れに逆らう自分も好きだが、身をゆだねる心地よさを味わうのもいいものだ。

畳の部屋で失礼します。長めのスカートが落ち着きますね。

衿もとは、Vネックに布テープ。

飾りのような本物のおしりポケット。

ベルトもカジュアル感いっぱいで、気に入っています。