新年は、初日の出を見に行くことから始まった。
日の出前に起き、車を5分ほど走らせ、夫と上の娘と「寒いね」「富士山きれいだね」と言い合いながら日の出を待った。
凍った空気のなかで待つ時間は長く感じられたが、初日の出が差した光を見て、すがすがしい気持ちになった。
「こうして毎日太陽が昇って、時は刻まれていくんだな」
ぼんやりと考えた。
さて。午後、徒歩10分くらいの坂を下った場所にあるポストまで歩いた。
いつもは車で通り過ぎるだけの道だが、朝、日本酒をいただいたので歩くことにした。よく晴れて風もない散歩日和。急ぐ必要も何もない。ひとりゆっくりのんびりと歩いた。
道端の石仏さんを拝み、定点観測地点で八ヶ岳の写真を撮り、堰に氷がはっているのを眺め、知らない人とすれ違って「こんにちは」と挨拶を交わし、大曲がりと呼んでいるヘアピンカーブを下り、ゲートボール場で野球をしている子どもたちに微笑み、年賀状の返事をポストに投函した。
そして、帰りは急な坂を上る。坂を下る、上るだけではなく、風景も変わっていることがおもしろく、自分の影を眺めたり、柿の木を見上げたり、堰の氷をのぞいたりしながら歩いた。
そこで、氷の上で羽ばたく野鳥を見つけた。羽に鮮やかな黄色いラインが入っている。たぶんマヒワだ。だが近づくうちにマヒワは動きを止めた。警戒して飛んでいくのかと思ったが、そのまま止まっている。窓にぶつかり脳震とうを起こした野鳥を何度か見ているので、同じような状態だとわかった。どこからか落ちたか、着地失敗か。氷の上にそのままにしていく訳にもいかず、手のひらにそっと包み日向の土に置いた。瞬きを繰り返しぼんやりとした顔をしていたが、そのうち飛んでいくだろうと、ふたたび坂を上る。
顔を上げると八ヶ岳の近くに、行きに下ったときにはなかった雲が見えた。
太陽の時間。地球の時間。山の時間。雲の時間。鳥の時間。人の時間。
それぞれに速度は違っているのだろうけれど、時が確実に刻み続けられていることに変わりはない。ポストまで行く道と、ふたたび同じ帰り道。だけどわたしは、ずっと進んでいる。
朝6時50分頃。富士山の周りが静かに赤く染まっていきます。
陽が昇り始めました。
ようやく迎えた初日の出。寒かったけど、きれいでした。
ポストに下る道端にいらっしゃる、石仏さんです。
元旦の八ヶ岳。てっぺんの方だけ雪化粧しています。
細い堰の水が、凍っていました。
大曲りを通り過ぎたら、すぐポストです。
帰り道に見えた、自分とカーブミラーの影。
上りだと目に入ってくる柿の木です。
ずくしになってるー。
向かって右端に、薄く浮かんでいる雲が見えました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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