「時間をつぶす」という言葉には、違和感を覚える。
「つぶす」にあるのはマイナスイメージだが、意味的には「時間を有効活用する」に近いプラスのものがあるのではないか。
きのうの朝は、出勤する夫と一緒に家を出た。
彼を9時前に韮崎駅に送り、わたしはその先の甲斐市、開国橋近くの手話サークルに行く。10時からなので、1時間近く「時間をつぶす」ことになる。家に帰るほどの時間はない。田舎で家族の送り迎えをしたことのある人なら、誰にでも経験があることだろう。
「どうしようかな」
しばらく走り、通り道沿いの信玄堤に車を停めた。
毛糸の帽子をかぶり、マフラーと手袋をして、カメラ片手にのんびりと歩く。
すでに紅葉を終え裸になった木々が目立ち、足もとには黄色から赤に近い茶色まで様々なグラデーションに色を染めた葉が地面を覆い隠している。
ふと見ると、色だけではなく、大きさも形もそれぞれだ。
ウォーキングしている女性が、爽やかに挨拶をして通り過ぎていく。息が白い。
遊ぶ子どもを待つカラフルな遊具もあれば、病に倒れたのか、何かの事情があったのか、切られたばかりの切り株もあった。
冬の初めの朝の空気を、存分に吸い込み、たまには途中下車もいいな、と思う。
そう言えば電車通学していた頃、いつもは降りない駅に降りてみたり、用もないのに終点まで乗ってみたりした。あのときも同じように思っていたのだろうか。
「たまには、途中下車もいいな」
知らない街に降り立ちつぶやく、若き日の自分を思い浮かべた。
何を考えていたのやら、今となっては自分でもわからない。
もし、30年後にまだ生きていたとしたら、今現在の自分を、こんなふうに思い出すことがあるのだろうか。
釜無川東岸沿いに続く『信玄堤』は、戦国時代、武田信玄が当時の土木技術を駆使して築いた堤防だそうです。水害が多かったみたいですね。
遊歩道になっていて、ジョギングやウォーキングする人の姿も。
足もとの葉っぱです。大きさも形も色も、まちまちでした。
遊歩道の階段って、趣があって好きなんです。
遊具がある場所や、バーベキューができる場所もあるんですよ。
切り株。何の木でしょうか。細い枝が、伸びてきていますね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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