2年前に治療して納まっていた咳喘息が、ぶり返したらしい。
ただ咳が出るだけなのだが、2年前には、咳こみ過ぎて肋骨にひびが入り痛い思いをした。それもあって、そうひどくはないが早めに治療することにした。
呼吸器内科は混んでいて2時間待ち。
小さな子どもが、泣いている。若いお母さんは、一生懸命話しかけている。おじいさんが、咳ばらいを何度もする。呼吸器内科なのだから喉に疾患があるのだろうが、子どもがうるさいと責めているかのようにも聞こえる。
「だいじょうぶだよ」
そう言って、小さな子どもを抱き上げたい衝動に駆られる。もちろん、そんなことはしない。知らないおばさんに突然抱き上げられたら余計に泣くだろう。
「だいじょうぶだよ」
若いお母さんに、そう言ってあげたい衝動にも駆られる。けれどもちろん、そんなことはしない。子どもに泣かれて困っているお母さんは、だいじょうぶなんかじゃないんだから。
薬をもらい家に帰って、ぼんやりと『ペペペ日めくりカレンダー』をめくった。
未来の分はとっておいているけれど、過去の分はすぐに忘れるのでたまに復習している。「小さなお願いをする日」というのがあり、あささんが「きょう公園の砂場に落ちてたスコップが無事に持ち主のところに戻りますように…」と紅茶を飲みながら思い浮かべていた。
もう一度、呼吸器内科にいた親子を思い浮かべてみたが、顔はまったく思い出せなかった。
「だいじょうぶだよ」
あささんに習い、名前も知らない彼らのことを思った。
たぶんこんなふうに、誰も彼もが、知らない誰かを思っている瞬間がある。
もしかしたら、呼吸器内科で泣いていた子どもに一生懸命声をかけていたのは、昔の自分だったのかも知れない。
小さなお願い。たぶん、みんなしてるんだよね。
静かめの『ペペペ日めくりカレンダー』をセレクトしてみました。
本さん、いつもありがとう。
ときには、見送ることも大切だよね。
気持ちよさそう!
めくる……。わたしより女子力高いな。
☆『地球の歩き方』北杜・山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。