きのうのこと。夫が、スマホを忘れて出かけていった。
「お昼頃に帰る。帰るまえにLINEするね」
そう言っていたので、たぶん連絡はないが、昼頃には帰ってくるだろう。
11時半。冷蔵庫の中身を見て、オムライスを作ることに決める。そこで考えた。
「イタリア人ならこんなとき、そうは言っても何時に帰ってくるかわからないんだから、帰って来てからキッチンに立てばいいやって考えるんだろうな」
だが悲しいかな、わたしは日本人。夫が帰って来たらすぐに食べられるように玉葱とシメジとベーコンを刻み、炒め始めた。
そして、夫も日本人。
お昼過ぎには「スマホ忘れた」と言いながら、玄関のドアを開けた。
『最後はなぜかうまくいくイタリア人』(日本経済新聞出版社)は、普段なら手にとらないタイプの本である。夫にすすめられたのだ。
たまに夫婦で同じ本を読むのもいい。食卓での会話がはずむ。それに1年前、ふたりでイタリアを旅したばかり。深くイタリアを知るのもまた楽しいだろう。
そんな軽い気持ちで手にとったのだが、これがおもしろかった。
1【仕事】ルーズなのになぜか結果は出る秘密
よく言われることだが、時間にルーズなのがイタリア人。だが彼らは「正確な遅刻」をしているのだとある。夕食20時と招待されたら20時半~21時くらいには用意は整うはずだと思うし、大学の教授は15分遅れてくるのが暗黙のルールで、生徒も15分くらいには集まってくる。それがイタリアでは当然あるべきハンドルの遊びのようなものらしい。なのに最後はうまくいく。意外な感じもするが、粘り強いのだそうだ。
日本人の普通の感覚でいったら、「もう無理だから、今日はここまでにし、後日仕切り直しましょう」となってしまうところだが、イタリア人は諦めない。誰に迷惑がかかろうとお構いなしで、最後まで粘るのである。
2【人生】好きなことだけ楽しみ、嫌いなことは先延ばす
イタリア人的感覚では、「有意義な一日は脱線により生まれる」のだそうだ。
「好き」なことを優先するから、目の前にある好きなことをやり過ごすことができず、寄り道することになる。それは「今、好きなこと」を大切にする人々だからで、仕事上でも「こっちが好き」また「これが美しいから」という感覚で選ぶことが多いらしい。だからこそ磨かれるセンスがあるという。
子どものときから「好きか、嫌いか」で人生を生きてきたイタリア人は、直観をかなり磨いている。「好き嫌いを言うことは我儘なのでいけないことです」と言われて育った日本人は、この直観を磨くチャンスを多く失ってきた。
3【家族と恋愛】対人関係を支配する、義理・絆・コネ
マンマの国イタリアでは、家族同士の絆がかたく同族会社も多い。コネ社会で、コネに頼らないまじめな人より、コネを駆使する能力を持つ人の方がかっこいいと見なされる。カップルも仕事関係や友人のあいだの狭い世界での恋愛が多いようだが、なぜかすぐに破綻する場合が多いそうだ。
感心するのは、イタリア人は感情的にこだわりがないことだ。何年か一緒に暮らしていたカップルが別れるには、それなりの理由があるだろうし、つらい思いもしただろうと想像するが、そのようなことはまったく感じさせない。やはり「今に集中する」力が破格に強いので、過去のことは簡単に忘れるのだろう。最も頼りになるコネである元カレ、元カノを非常に大切にして、一緒に仕事を続けている。
4【食事】食卓でのふるまいは、商談以上に難しい
イタリアでは食事の時間が長く、短くても2時間、長いと5時間にも及ぶことがあるそうだ。食卓での時間を大切にする国なのである。
「In vino veritas(ワインには真実がある)」というラテン語の諺は、ワインを飲むと本性が出る、あるいは本音が出るという意味らしいが、食べるという本能的な行為をともにすることで、たがいに素顔を見せ合う。それが栄養補給よりも大切なことだと考えられているらしい。
自分をアピールして仕事や恋のチャンスをつかみ、友人を増やして、コネを広げる舞台だからだ。だから食卓ではそれなりに面白い笑い話や楽しいエピソードを語って、食卓を盛りあげることが求められる。
ことあるごとに、「わ、イタリア人っぽい」「やっぱ、日本人だからね」
しばらくそんなことを考えて、ニヤニヤしたり納得したり、楽しめそうである。
赤と緑が洒落た感じです。イタリアの国旗カラーですね。
ラスト5章には、著者宮嶋勲が独断と偏見で考える地域別の特徴や「不思議の国イタリアの”あるある”行動」のおまけつき。
何の変哲もない昼食のオムライスですが、夫の手作りベーコン入りです。
彼愛用のスモーカーR2D2です。スターウォーズのR2D2より、さらに年季入ってるかも。
美味しすぎて食べ過ぎるのが・・・。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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