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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

築地な寿司で朝食を

連休は急遽神戸に帰省することになり、また翌日には東京で所用があり、夜遅く新幹線で東京へと向かった。

急ぎでとったホテルは、築地だった。

その東京での朝のこと。

 

「寿司、食いに行かない?」

夫が言うには、築地場外では朝早くから寿司を食べられるという。ふたり、ふらりと歩いてみることにした。

ゴールデンウィークだが、朝なので人も少ない。

人気は海鮮丼らしく、朝からどんぶりを抱えるようにして食べる人が目立つなか、のんびりと歩きながら握りを出してくれる店を探した。握ってくれる店もけっこうあって、品定めしながら歩き、暖簾のない路地沿いのカウンターで食べることにする。

8人掛けのカウンターに、カップルが2組。ふたりずつ間仕切りがあり、わりとゆったり座れた。寡黙な板さんの手さばきを見惚れつつ、目の前で握ってもらった寿司は、美味かった。

 

さて。セットの味噌汁を忘れているようだと気づいたのは、握りを食べ終わってからだった。

メニューは下げられていたが、「椀付き」とあったはずだ。

次に入った客の前には、同じ握りと湯気立つ椀が置かれている。

「椀、付いてるんじゃ?」

おずおずと申し出ると、「!」という表情の板さん。

「それにしても、我慢強いねえ」

食べ終えるまで気づかなかっただけだが、江戸っ子の粋な返し方にやわらかな笑みがこぼれる。

板さんはひとりで、寿司を握るのも器を下げて洗うのも会計もすべてこなしていた。昼は客数も多く、もうひとりスタッフが来るのだという。

「仕込みもあるし、お客さんも10分おきに来てくれりゃあいいんだけど、そうもいかねえし」

寡黙だと思っていた板さんは、しゃべり始めるとおもしろいほどよくしゃべった。

仕込みのヒラメを卸しながら、「ヒラメ左の右カレイ」(目の位置)なんて言葉や、ヒラメやカレイが稚魚のうちは他の魚と同じように両側に目がついていること、右に目がついたヒラメもいることなどを教えてもらった。

 

熱いあおさの味噌汁は、今この瞬間にしか味わえない乙な味がした。

築地虎杖(いたどり)。市場通りを入ったなかで、食べました。

細い路地に、「虎杖」という名のいくつものお店が。海鮮丼のお店も多かったです。

ひとりで忙しく立ち働いていた板さんが握ってくれたお寿司。美味しかった。

歩くだけでも、楽しい。肉も野菜も何でもありました。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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