雨のなか、夫婦ふたりでバーベキューをした。
大き目のパラソルの下には、テーブルと椅子2つ、バーベキューセットがすっぽり入る。雨が降っても予定を変更することもない。
試したいこともあった。先日の会社のバーベキューで、アメリカ男子が焼いてくれたローストポークに挑戦しようという試みだ。
焼きながら塗る秘伝のタレのレシピは教わった。ちょっと手間をかけ、ふたりで美味しいものを食べようという話は、すぐにまとまった。
秘伝のタレは煮込んで作るタイプのもので、彼は網でほかのものを焼きながら、タレの入ったソースパンをずっと火にかけていた。2時間煮込んで、そのあいだにほかのいろいろを食べ、メイン料理的な位置にローストポークを置き、ラスト近くにそのタレを使って作るという素晴らしく綿密な計画を立てていた。
今回はそれはできないので、タレはキッチンで先に煮込んでおいた。
だがそのタレが、彼が作っていたのものとはずいぶんと違って見えたのだ。
「なんか、違うよね、これ」
「見た感じが、ぜんぜん違うね」
何かが違っているのかも知れないと思いながらも、とりあえず、それで焼いてみることにした。
イカやら、焼き鳥やら、茄子やら、椎茸やらを焼き、そのあとローストポークを焼き始めた。タレを塗るためにわざわざ刷毛も買った。
時間をかけて、ていねいに何度もたれを塗り、ひっくり返しながら焼いた肉は、アルミホイルに包んで寝かせ、完全に火を通すのは余熱に任せる。その効果でやわらかく仕上がるという。「寝かせる」と日本語でもいうが、英語でも「スリープ」というのだと教えてもらった。
「タレ、違う感じだったけど、だいじょうぶかな?」
寝ているローストポークを見ながら、不安もよぎったが、切って口に入れた途端、ホッとした。申し分なく美味しかった。
「でもさ、味も彼が作ったのと、やっぱりなんか違うね」
すると、夫が言った。
「まあ、美味しいんだから、いいんじゃない?」
それを聞いて、ハッとした。
「そっか。美味しいんだもんね。いいよね」
同じものを作ることが、目的だっていうわけじゃない。美味しく作ることが、いちばん大切なのだった。いろいろこだわるうちに何が大切かを忘れてしまうことって、ままある。とは言え、肉の切り目の入れ方やら、火加減、焼き方などなど、反省点も多々ある。ここからは、自分のレシピを追求しよう。
豚肩ロース肉に切り目を入れて、ニンニクを埋め込み、塩胡椒します。
それを焼肉のタレに漬け、冷蔵庫で4時間ほど寝かせました。
秘伝のタレ、煮込み中。これが、なんか違う仕上がりに。
焼き始めました。このときちょっと火が強かったというのが反省点。秘伝のタレを塗りながら、ひっくり返しつつ焼くこと約20分。
あとは余熱で。アルミホイルのなかでスリープさせます。
できた! めちゃうま!
今が旬のトウモロコシも、何もつけなくてもめちゃうまでした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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