「お正月の匂いだね」
大晦日の朝、起きてきた夫が言った。
すでに煮しめの牛蒡と椎茸を煮始めていて、たしかにそれはお正月の匂いだ。
だがここ数日、わたしは玄関に入るなり思っていた。
「あ、お正月の匂い」
それは煮しめの甘い匂いではなく、ニンニクの鼻をつく匂いだ。
90歳の父が、今年もまた白菜を漬けたと送ってくれたのである。
2年前に肺癌の手術をした父は、術後しばらく元気がなかったが、キッチンに立つようになると見違えるように溌剌とし、その後、故郷の北海道へ行くこともできた。今は定期的に通院しながら、買い物も料理もしている。
「今年は、白菜、3回漬けたよ」
電話すると、自慢げに言う。
なのでこの時期、ニンニクと鷹の爪を効かせたシンプルな塩味の白菜漬けの匂いが、保冷庫となる玄関から、そして冷蔵庫からも匂ってくる。
この季節だけの匂い。まさに、お正月の匂いなのだ。
お正月は、たぶん多くの人にとって鼻からやってくるものなのだろう。
年に一度だけ開けた、百人一首の匂い。初詣した神社の、石段の匂い。凧を上げ、見上げた空の匂い。炬燵で剥いたミカンの、甘くやわらかな匂い。どこかの家から漏れてきた、カレーのスパイシーな匂い。玄関先で履いた、スニーカーの匂い。スマホにこぼした、ウイスキーの匂い。
どんな匂いも、たぶん誰かを思い出させる。
東京で新年を迎える子どもたちは、誰を思い出しているのだろうか。
父の白菜漬けです。
寒椿の暖簾に替えた、新年仕様の玄関。
なんとか今年もできあがった御節。
お煮しめだけは、ひとつひとつの味つけで煮ます。
☆明けましておめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
明けましておめでとうございます。今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
玄関の寒椿の暖簾、お父様の美味しそうな白菜漬けのエピソード新年早々とても心が温かくなりました。
昨年はさえさんとお知りあいになれて、とても嬉しいことでした。
そしてためになる情報モアたくさんここでいただきました。
今年はご夫婦お二人で静かなお正月をお過ごしですね。
我が家はここ数日賑やかなのですが、若い人たちの胃袋を満たすために私は久々に忙しくしておりました。
『私もこんなに食べられたかな~?』と思う数日です。
ブログのおかげでとてもくつろげる心のオアシスができました。
新しい年もそのオアシスに来れる幸せを噛み締めています。
今年もどうぞよろしくね。
hanamomoさん
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
毎年年越しのときに寒椿の暖簾に替えるので、これもまたお正月を連想するものになっています。
わたしもhanamomoさんと出会えて、ブログを見せていただいて、ハッとしたり、もっと丁寧に暮らさなくてはと思ったり、たくさんの思いをいただきました。
ありがとうございます。
にぎやかなお正月。いいですねえ♩
どんどん食べられる若い人を見るのって、気持ちいいですよね。
わたしも同じく、ブログにオアシスをもらっています。
ほんと、今年もまた仲良くしてくださいね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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