『鍋の天下一品』レシピの「鶏たたき鍋」は、鶏の歯ごたえを大切とする鍋である。だから鶏挽肉ではなく、鶏むね肉をたたいた「鶏たたき」を使う。
試行錯誤しわたしは、たたいた鶏もも肉とむねの挽肉を半々に混ぜているが、どちらにしても歯ごたえが楽しめるような硬さにするのが肝心だ。
その歯ごたえを楽しむための鶏団子を追求しようと検索していて、驚いた。
「鶏団子鍋」と打つと「ふわふわ」と出てくる。
今の世では、豆腐や山芋などを使ったふわふわの鶏団子を鍋に入れるのが人気なのだった。
「ふわふわもまた、美味しいかも」と思いつつ、いつもの「鶏たたき鍋」の美味しさも捨てがたい。時代に逆行していても、自分の舌を信じてもいたい。
「次は、ふわふわ鶏団子の鍋にしてみようかな」
そう思いつつもまた、いつもの味に後ろ髪をひかれ、あるいはすっかり忘れ、我が家のスタンダードを作ってしまうような気もする。
そして検索したなかには、「卵も葱も入れない鶏ひき肉を粘り気が出るまで混ぜるだけが好き」という記事もあり、ほうう、とうなり、こっちも魅力的だ、と目を見張った。
いつも食べているものが美味しければ美味しいほど、固執し、保守的になり、新しい一歩を踏み出すことは容易ではなくなる。
それでもなお、新しい味を求め続けてもいたいのだ。
鶏もも肉と葱を、メッツァルーナでたたきます。イタリアではどの家の台所にもあるみじん切り用の包丁です。
我が家では、たたいた鶏肉と葱に鶏むね肉の挽肉と卵を、粘り気が出るまで混ぜています。
具は、鶏たたき、水菜、葱、シイタケ、豆腐。
ほかの具材が煮えたら、水菜を投入。
鰹と昆布の出汁が効いた濃い目の汁に、鶏のいい匂い。
今回は、初めて柚子胡椒を薬味にいただきました。こういう挑戦は簡単でいいですよね。美味しかったです。
メッツァルーナは、いろいろな料理に大活躍。
アボカド鮪ユッケの鮪も、メッツァルーナでたたきました。
むかしのブログに、イタリアで購入したときのエピソードがありました。
メッツァルーナを鞄に入れて、ふわりとうれしい気持ちのまま、美術館に入った。そして、入り口でセンサーに引っかかった。
「メッツァルーナ?」と、守衛さんが笑って肩をすくめる。
「メッツァルーナ」と、わたしも笑って肩をすくめる。
「クチーナ?」と守衛さん。料理に使うのかい?
「ええ、日本料理に」となんとか答えるわたし。
イタリア語がもっとしゃべれたらなぁと思った。
「メッツァルーナじゃ、人は殺せませんよねぇ」なんてジョークをとばしたのに。(しゃべれなくてよかったかも)
こんにちは。
メッツァルーナ、人は殺せないかもしれないけど
日本に持ち帰るときは大変ではありませんでした?
昔、剣詩舞の海外公演で日本刀の模擬刀を持ち出すだけで大変でした。
まだ、岡山空港の国際線ができた頃で、足止めをくい
「これがないと行く意味がありません。」の言葉で
機長預かりで無事、持ち出せました。(笑)
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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