「特等席だね」
夫のアイディアで、薪ストーブの真ん前に置くと、ホッとした表情になったように見えた。
パン生地である。
「パン子ちゃん、特等席に座る、だね」
二十四節気でもっとも寒い大寒の季節だけに、家のなかも寒い。
先週、パンを焼こうとこねたのだが、翌日になってもふくらみが悪い。ホシノ天然酵母目安の15時間を経過しても、なかなか発酵が進まない。2階の薪ストーブの真上に一晩じゅう置いておいたというのに。
しかし、特等席に座ったパン子ちゃんは、緩やかに膨らみ始めた。3時間ほど経つと、こねた状態の2.5倍になり、ようやくベンチタイムを迎える。
生地は、しっかり発酵していた。
寒いのは、人間だけじゃない。
父の納骨で東京に泊まったときには、ファンデーションがやわらかくなっていて、驚いた。それだけ明野の我が家は冷え込んでいるのだ。
今日は、立春。
立春には「立春大吉」とかいた札を貼る土地もあるという。
表から読んでも、裏から読んでも「立春大吉」と読める、春を待つ縁起のいい四字熟語だ。
今日を境に、パンも少しずつ発酵が早まっていくといいな。
薪ストーブの真ん前に置きました。
薪ストーブ側が、ぽっこり膨らんで、ようやく2.5倍になりました。
焼き立て~
夕飯は、ディップ料理に。
アボカド鮪ユッケも、パンと一緒に食べると美味しさアップ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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