新しいご飯土鍋を、購入した。3代目である。
1代目の土鍋は、蓋が割れてしまった。2代目は、やはり蓋が欠けたまま炊いていたのだが、最近炊き上がりが気になり始め、新調することにした。
平松洋子の『夜中にジャムを煮る』を読み、飯炊きへのこだわりに影響されたところも大きい。
その新しいご飯土鍋で、筍ご飯を炊いた。
庭の山椒が葉を広げ始めると、筍ご飯食べなくちゃ、という気持ちになる。
だが、筍とすれ違っているうちに食べられない年も多い。
スーパーでは買いたくない。地もとで掘った筍がいい。なので産直野菜売り場で探すが、午後には売り切れている。しかし、午前中に筍目指してまっしぐらというのもなかなかに難しい。
時間があるようで、しかし、フットワークが以前のように軽々と、とはいかない。
筍最優先にすれば、そりゃ手に入るだろう。
だがほかの優先課題が、どうしても先になる。
ふと考えた。
「筍は、ポストと似ている」
ポストの前を通ったときに出そうと、郵便物を鞄に入れる。その途端、ポストは遠くなる。
本日じゅうに出さなければならないものなら、最優先にする。午後5時に集配する郵便局まで、車を飛ばすことすらある。
けれど、まあ10日ほどのうちに出せばいいや、というものほど、そのチャンスはやってこない。
ポストは、意外に遠いのだ。
そんな焦りに似た気持ちのなかで、今年は筍に間に合った。
新しいご飯土鍋の蓋を開けると、静かなえぐみをたたえた湯気が鼻腔を心地よくくすぐった。
3代目ご飯土鍋「菊花」。2合炊きにしました。強火で沸騰させて火を止め、蒸らすこと20分。美味しく、そしてエコです。
手に入れた筍は、北杜市産。
夜茹でて、朝まで置いて、お昼、筍ご飯にしました。
ひと口、味見。やわらかい。
油揚げと筍の炊き込みご飯。いい匂い。
お焦げもなく、綺麗に炊けていました。
筍ご飯には、木の芽がなくちゃね。
庭の木の芽は、もう花を咲かせようとしています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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