最近、味噌汁を作らないイレギュラーな朝食が続いていた。
前日の残りのシチューだったり、肉じゃがの残りに卵を落としたり。
久しぶりに食パンを1斤買い、トーストと紅茶の朝食にしたり。
トーストを焼くたびに、思い出すことがある。
夫の実家に帰ったとき、朝食を義母と一緒に作っていた。義父は朝トーストを食べたいということが多く、キャベツの千切りもお決まりで、それにベーコンエッグなどを焼く。義父はキッチンのテーブルで食べるので、義母は夫の朝食を作り終えてから、ゆっくり自分の食事を作り始めるのが常のようだった。
「お義父さん、トースト何枚焼きますか?」
「2枚、頼むよ」
「じゃ、焼きますね」
トースターのつまみを回し、ベーコンエッグを焼き、ホットミルクをレンチンする。
キャベツの千切り以外は、どれも熱々を食べたい種類のものである。同時進行で料理するのも、毎日キッチンに立つ人なら当然のことで、トーストの焼き上がりに合わせて朝食が出来上がる。
「ご飯、できましたよ」
声をかけるが、さっきまで居間で新聞を広げていた義父の姿がない。
「散歩に行ったみたい」
義母が、肩をすくめる。
「ほんとうなんですねえ」
「そうなのよ」
義母に聞いてはいた。食事が出来上がるときに限って、義父はいなくなるのだと。
「冷めちゃうのになあ」
帰ってきた義父は、しかし冷めきった食事を美味しそうに完食した。トーストが固くなったと、文句を言うこともない。
作る方と、待つ方(食べる方)と。その感覚には、ズレと言ってしまうには大きすぎる違いがある。それが夫婦というモノなのかと思ったりもした。
「何時に出来上がる」とか「熱々の方が美味しいから待ってて」とか、言葉にすればいいのかも知れないとも思うが、それを口にできなかったり、その言葉がすれ違ったりするのもまた夫婦なのだろう。義母は釈然としないながらも、夫の身体のことを考えた食事を作り続けていたのだから、すごいなあと思う。
「もうすぐ出来るよ」「OK」と言葉を交わし、熱々出来立てを一緒に食べる。
ただそれだけのことだが、じつは何にも替えられない大切な時間なのだと、毎朝食卓に着き思うのだ。
きのうのトーストと紅茶の朝食。
じつは初めて作ったビーフシチュー(ルーです)の残りで。
肉じゃがに卵を落とした朝食。
こんばんは。ずいぶんご無沙汰をしてしまいました。
神戸のお義父様、お散歩ですか!楽しい方ですね。
トースト冷めても美味しいのですね。
気ままな一人のご飯もいいけれど、やっぱり誰かのためにも作るご飯っていいですよね。
優しい料理人が言うには、高価なものでなくても、ごちそうでなくても、その日の体調に合わせて塩を加減したり、柔らかくしたり、そんなことを思って作ったお料理は美味しいと。
さえさんのお宅のご飯はとても我が家と似ています。
ちなみに今夜は産直で買った大きなカリフラワーの茎があまりに立派だったので、細かく切ってじっくりと炒めて食べてみました。
味わい深く、調べたら食べられると書いてありました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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