映画『万引き家族』を観た。
第71回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の是枝裕和監督作品だ。
タイトルの通り、日々万引きして生計を立てている家族を描いている。
「犯罪でしかつながれなかった」というキャッチコピーをまず最初に思いついたという是枝監督。
年金詐欺を働いていたり、親が子どもに万引きを働かせていたり、そういった事件が報道されるともの凄いバッシングが起きますよね。当たり前ですけど、悪いことをしていたんだから。でももっと悪いことをしている人が山ほどいるのに、それをスルーしておいて、なぜ小さなことばかりに目くじらを立てるんだろうって。
そんな社会への違和感と、震災以降連呼されるようになった「家族の絆」というものをあらためて考えてみたいという思いで撮り始めたという。
祖母、初枝(78歳)【樹木希林】
夫、治(47歳)【リリー・フランキー】
妻、信代(36歳)【安藤サクラ】
妻の妹、亜紀(21歳)【松岡茉優】
息子、祥太(11歳)【城桧吏】
5人家族は、高層マンションの谷間に建つ平屋で暮らしていた。家はかなり古く狭くて乱雑で、祥太の部屋は押し入れだ。
2月の冷え込んだ夜、治と祥太は、団地の外で凍えているゆり(5歳)【佐々木みゆ】を保護した。どうやら母親に虐待されていたらしいとわかり、親元に返すこともできず一緒に暮らし始めてしまう。親は、ゆりを探すつもりもないらしい。狭い家にまた人が増え6人家族となった。
その後、治は工事現場で怪我。信代はパートをクビになる。収入は、初枝の年金だけ。祥太はゆりを連れてふたりで万引きするようになるが、自分たちがしていることに罪悪感を覚え始める。そしてとうとう、家族が崩壊する事件が起こってしまうのだった。
「お店がつぶれなきゃ、いいんじゃない?」
人のものを盗るのは悪いことなのに、どうして万引きはいいのかと訊く祥太に、信代が答える。自分たちが生きていくために、人に迷惑をかけない範囲をちょっとだけ広げただけだ。そんなふうに聞こえた。そしてそのボーダーは、誰しもどこか曖昧なものではないのか。
彼らはたがいを思いやり、狭すぎる空間を共有して暮らしていた。そして、虐待されていたゆりを放っておけない心をそれぞれが持っていた。
夏の夜、雨のなか家族そろって縁側から見えもしない花火を見上げるシーンは、とても温かだった。
映画のパンフレットです。
表紙の写真。縁側で家族そろって穏やかな笑顔。
治は、人に子どもに優しいけれど、自分にも甘い。
血の繋がらない祖母、初枝のもとへ転がり込んだ亜紀。
信代とりん(ゆり)の印象的だったシーンです。「ぶたれるのは、りんが悪いからじゃない。愛しているなら、こうするのよ」
こうしていると普通の兄妹に見える、祥太とりん。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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