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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『Supermarket Flowers』

末娘は「大人が言う”いつか”は、やってこない」と小学生の頃、言っていた。だがわたしは、よく思う。”いつか”その日がやってくるだろう。

 

運転中によく聴くEd Sheeran(エド・シーラン)の『Supermarket Flowers(スーパーマーケットフラワーズ)』も、そうだった。スーパーマーケットで売られている安物の花。このタイトルに魅かれ、澄んだピアノのやわらかなメロディが胸に響くも、しかし英語の歌詞はまったくわからない。

”いつか”と思っていた。”いつか”この歌の歌詞を読む日が訪れるであろうと。

 

トリガー(引き鉄)は、思いもよらぬところに潜んでいた。

読んだばかりの『森に眠る魚』にあった一節だ。千花の視点で綴られている。

イタリアから輸入されたパスタソースや種類豊富なパスタ、フランスの瓶詰ピクルスやジャムを見ていると、気持ちが和んだ。家の近所のスーパーは、スーパーと呼びたくないくらいちいさく、輸入品などまるでない。大通りに並ぶ個人商店はみな古くさくてぱっとしない。近所で買い物をしていると、それだけで千花は気持ちが萎える。

高級スーパーで不必要な買い物をしてしまい、その荷物の重さに重力以上の何かを感じながら、千花はかおりとその彼と食事した時間を思い起こす。

彼らの時間は、輸入物の揃ったスーパーマーケットに似ていた。そして容子や瞳、幼稚園の母親たちとのつきあいは、今住んでいる町の商店街に似ているように、今や思えるのだった。

どんな歌詞だろうと思いながら聴いた『Supermarket Flowers』は、しかし、わたしのなかの雑念を払拭するものだった。

I took the supermarket flowers from the windowsill
スーパーで買った花も 窓辺から片付けて
Threw the day old tea from the cup
カップに入ったままの 昨日の紅茶も捨てた
Packed up the photo album Matthew had made
マシューの作ったアルバムも 箱にしまった
Memories of a life that's been loved
愛された人生の思い出たち

そう始まる歌は、亡くなったばかりの母親へ捧げる愛と感謝の歌だった。「スーパーマーケットの安物の花」は母親が部屋に飾ったものだった。つましく暮らし花を愛するように日々を愛しんだ母を、この一節で描いている美しい歌だ。

So I'll sing Hallelujah, you were an angel in the shape of my mum
ハレルヤを歌うよ あなたは母の姿をした天使だった

そして奇しくも「母親」という森の深さを描いた小説とつながった。

我が子を思う彼女たちの思いは、確かに「天使」と言い換えることができるかも知れないが、母としての自分がそうだとは思えないのもまた確かだ。

Ed Sheeranの『DELUXE』に収められた『SupermarketFlowers』です。

花を飾る習慣はありませんが、庭では今、韮の花が咲いています。

COMMENT

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  1. hanamomo より:

    Ed SheeranのSupermarketFlowers、すてきな歌ですね。
    穏やかでやさしいピアノ、この歌の題名からはおよそ想像つかない内容の歌詞。
    涙が出てきますね。
    私はスーパーの花も買わないで、庭に何か咲けばいける暮らしです。

    いま逃走中の脱獄犯のニュースをみて懸賞金がついたと知りました。
    生まれた時この人の母も『いい子に育って欲しい』と願ったはずです。
    どこでこれが壊れたのか?すべて親のせいでもないし、その人のせいでもないのでしょうが、子が生まれた時の親の気持ちはみんな同じだった事を思うとやるせなくなります。

    森に眠る魚も、初めは何も、誰も悪くないのに、どんどんそうなってしまったのは、人間の欲がそうさせてのでしょうか。
    彼女はもう刑をお終えてこの国のどこかで暮らしているのでしょうね。
    殺してしまった家族から命じられた償いのお金は途中から払っていないようですね。

    • さえ より:

      hanamomoさん
      『SupermarketFlowers』いい歌ですよね。
      傷つくのは愛された記憶があるから、という言葉が胸に落ちました。
      脱獄犯、懸賞金がついたんですね。知りませんでした。
      生まれ落ちて愛されて育って、それでも変わってしまう人もいる。悲しいことですね。
      『森に眠る魚』、そうなんです。
      悪人はいないのに、嫉妬や焦りやプライドや不安や弱さや、そういうものが自分自身を、相手との関係を変えていくんです。
      実話をモチーフにしているだけに、考えさせられることも多いですね。
      遺族の方たちの人生も、大きく変わってしまったことと思います。
      愛して育てれば、いい子に育つ。
      そんな方程式が成り立つんなら、子育ての悩みも少ないんでしょうけれど、そうはいきませんね。

PROFILE

プロフィール
水月 さえ

随筆屋。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

夫が営む広告会社で経理を担当。

2012年から随筆をかき始める。

 

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。

 

『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

随筆かきます。

 

依頼はメールフォームからお願いします。

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