週末、長野の伊那の『ストーブ祭り』に出かけた。
開催しているのは、薪ストーブ屋の『DLD』だ。室内用の薪ラックを見たいと思ったのだ。軽食や小物の出店も出るらしい。高速に乗れば1時間ちょっと。予定のない休日のドライブにはちょうどいい距離だ。
小雨が降ったりやんだりのどんよりとした天気だったが、会場はにぎやかだった。薪割り体験のほか、子どもたちが遊べるワークショップ的なイベントがいくつかあったし、クレープ屋さんのワゴンには行列ができていた。そのなかで夫が目を留めたのは、斧投げコーナーだった。
5mほど先の丸太に刺さるように、斧を投げる。時間で何本刺さるかを競う大会も行われているようだった。
「ちょっと、やってみてもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
試しに投げるのは無料だった。夫は、3本目にはみごと丸太に刺さり、納得したようだ。彼は、ダーツでも射的でもボーリングでも何でも、的に当てるタイプの競技が得意なのである。だが、わたしはその真逆。的当てはことごとく苦手だ。
「やってみる?」
斧を手渡されたが、そのずしりと重い感触に緊張が走った。
やりたい。だが、大事故につながるということはないだろうか。逡巡したが、やってみたいという好奇心が勝った。右手に持った斧を振りかぶる。
ぼこっ。
鈍い音がして、斧は丸太の端に当たった。刺さることはなかった。
「よかった!」
事故を起こすことなく、わたしの斧投げ体験は終わった。的当てで外してこんなにホッとしたのも、すがすがしい気分になったのも初めてのことだった。
常に的を外すわたしのこの能力。もしかすると、普段の生活にも発揮しているのかも知れない。的外れな言動や行動、うーん。あるかも。方向音痴にも通じるものは大きいし。じつのところ今向かっている方向も立っている場所も、求めている的からはかなり外れているのかも。
でもさ、求めている的って何だろう? 霧の向こうにあるかなしかのようなその的を探しに行くのには、あらぬ方向へ回り道するしかないような気もするのだ。
そのあと観て歩いた薪ストーブが並べられたショールームは美しく、洒落た鍋や食器、ストーブ周りの小物などが並んでいた。言葉にはしなかったが、夫と顔を見合わせると、何を思っているのかはわかる。薪ストーブを燃やす暮らしって、実際にはこんなにお洒落できれいな生活とはいかない。求めている方向とのずれは、日々の小さなところにもそこここに存在する。
とりあえず、薪は投げるわけじゃない。だから、わたしでもきちんとストーブの中心に入れられるし、燃やせるのである。
薪割り体験。きちんと指導してくれるスタッフがついていました。
ここが斧投げ大会会場です。大会で入賞した人にはストーブ関連の賞品が。
お試しでも、斧が何本も丸太にしっかり刺さっている人もいました。
薪の早積みコンテストも、開催していました。ここでしか開催しないんでしょうね。日本記録が出ていました。
いろんな薪ストーブがあるなあ。大きさもそれぞれ。
おー、あったかい。薪ストーブも進化してるんだよなあ。
薪ストーブに縁のない生活をしているので、ストーブ祭りなる物も、斧投げ大会も、珍しくて面白いな~って思いながら拝見してました。
斧なんて、私持ったことないかも・・・?(笑)
そうなんですよね。薪ストーブのある暮らしに憧れていますが、実際はそんな憧れだけでは生活できないですよね。
人間ってほんと、無い物に憧れますね。
咳喘息、治ってきているようで、良かったですね。(*^^)v
ユミさん
ストーブ祭りには、たぶんこれから薪ストーブを買う予定の人や、いつかほしいな~と漠然と思ってる人が多かったように思います。
現実問題、煙突がつけられる家じゃないとムリだし、ほんと、憧れと生活することとは違いますよね~
斧、けっこう重いです。力だけじゃ足りないから重さで薪を割るってことなんでしょうね。
咳喘息のこと、ありがとうございます♩夕べは撮ってもよく眠れました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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