庭の北側で、苔にうずまっているけろじを見つけた。
冬眠から目覚めてはいだしてきたばかり、といった様子で、見るからに眠そうだ。
すぐ近くに山栗のイガが落ちていたので、心配になってどかそうとしたら、夫にいさめられた。
「そういうことは、しちゃいけない」
自然のなかの生き物は、自然のまま生きるのがいちばんいいということだろう。
イガをそのまま残し、その場をあとにした。
夕方、ふたたび見に行くと、けろじはまだ苔のなか。
「まだ、眠いんだね」
聴こえないようにそっとつぶやき、家に戻った。
翌朝見に行くと、もうどこにもいなかった。
小さな穴だけが、森閑を漂わせ残っている。
ここからけろじがはいだしてきたことを知らなければ、目に留めることもないような小さく何の変哲もないただの穴だ。
こんな穴が、庭中に、いや、この季節日本じゅうにある。
誰も目に留めることのない日本じゅうの小さな穴を、目を閉じて静かに思った。
苔に埋もれていました。
可愛い♡
近くに山栗のイガが落ちていて、心配でした。
翌朝、お布団を出た後だけが残っていました。
こちらは、テッポウユリの葉にいた別のけろじです。
こちらは、紫陽花の葉陰で眠っていたけろじ。春眠。ねむいね~
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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