温かな雨が降ったと思ったら、今度は雪が降った。
日も暮れてカーテンを閉めたあとに降りだした雨の音が、やけに大きく響くので、ずいぶんと大粒なのかと思っていたら、みぞれだったらしい。
20時過ぎ、夫を迎えに外へ出て驚いた。駐車場も車もいちめんが真っ白になっていたのだ。すでに雪を降らせた雲は流れ、満天の星空がその雪を照らしていた。
「今日、タイヤ交換の予約したところなのに」
まるで、空の上から見ている誰かに、まだ早いんじゃない? と諭されたような気分になる。それでも道路に積もることはなく、駅までの道のりには何も心配はなかった。
「どこ、行ってきたの?」と、車を見るなり夫。
韮崎駅前のロータリーで、雪をかぶっているのは、うちの車だけだった。
「どこにも、行ってないよ」と、わたし。
「だって、雪降ってないじゃん」
「韮崎に降ってなくても、明野には降ったの」
そんな会話をしつつ、20分弱の道を上っていく。上っていくが、明野に入っても雪はまったく積もっていない。
「明野にも、積もってないじゃん」
「あれ? おかしいな。どこから雪だったんだろう」
下るときには気にも留めていなかったのだが、上っても上っても、白いものは見えてこない。
「いったいどこに、行ってきたの?」
「だから、行ってないってば」
そんなふうに言いあいながら、車を走らせる。そして、ようやく雪が見えてきたのは、なんとお隣りの家の前からだった。
「ほんとに、積もってる」
「ほとんど、うちから上にだけ積もったんだね」
ふたり苦笑しながら、車を降りた。あたりまえだが、雪の降る場所にも始まりと終わりがあり、内側と外側がある。凍った雪を、星々が白く白く照らしていた。
「あの星が見える場所にも、始まりと終わりがあるんだよね」
自分がいる場所の広さと狭さを、星々と白く光る雪に見た気がした。
翌朝の庭です。西側、ウッドデッキがある方。煉瓦の上の台には、野鳥たちのために水と餌を置いています。
うっすらと積もって、でもしっかりと凍って。
今年いただいた薪も、雪をかぶっていました。
東の玄関側の水仙の蕾の周りも、凍っています。
びっきーが眠る場所も、真っ白になっていました。
2階の窓から眺めた風景です。越してきた頃には、八ヶ岳がきれいに見えたんですが、お向かいの松が伸びて今は半分だけ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。