きのうの朝、今にも泣き出しそうな空の下、車の後ろのてっぺんに何やら乗っているのが見えた。カマキリだった。
近づいて見てみると、お腹がパンパンに膨れている。産卵間近の母さんカマキリらしい。こんな高いところで産もうとしているということは、今年の冬は2mも雪が積もるのか。いや、それより車に産まれたら困るんだけど、などと考えつつシャッターを切る。
その間、母さんカマキリはただゆらゆらと身体を揺らしている。
これはこちらを威嚇しているのか、それとも産卵が始まるのか。
部屋に戻り調べてみると、威嚇でも産卵でもなかった。カマキリが揺れるのは、「ここに生物はいないよ」「草が揺れてるだけだよ、ほら緑でしょ」という身を守るためのアピールだそうだ。何とも遠回しな身の守り方である。だがこれも、カマキリたちの進化の歴史のなかで培ってきた生きるすべのひとつなのだろう。
人間にも、あらかじめ脳にプログラミングされているものがある。
赤ん坊が口に当たったものを強く吸おうとするのもそうだ。だからこそミルクが飲めて生きることができる。
つまづいたときにとっさに手が出る動作も、赤ん坊のときから「パラシュート反射」として見られる。
3つの点を見るとなぜか顔に見える「シュミラクラ現象」も、外敵である動物から身を守るために素早く敵の顔を認識すべく脳に組み込まれていったという。
そう考えると母さんカマキリは今、何を考えることはなくとも、生きるために揺れている。そんなふうに思えた。
遠くから見ても、何かいる! ってわかりました。
お腹の大きな母さんカマキリ。愛嬌のあるお顔だなあ。
空を見上げているかのよう。そっとしておいたら、いつのまにかいなくなっていました。どこかでぶじ産卵していることでしょう。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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