富士川町のあじさい寺へ、取材に出かけた。
『小室山妙法寺』という日蓮宗のお寺だ。
日本じゅうに「あじさい寺」と呼ばれるお寺があることは知っていたが、山梨にもあるのだった。先日お会いした方に教えていただいた。
あじさい祭りは開催されていたが、都心や京都のそれとは違い人もそう多くない。お寺は紫陽花で着飾った雰囲気はあるも、普段着の姿にも見える。
のんびりとしたその様子にまた、紫陽花が似合っていた。
田舎の祭りや名所は、そののんびりとしたところが味でもある。
帰り際、受付にいた初老の男性に会釈すると、声をかけられた。
「16観音は、ご覧になりましたか?」
「はい。味わいのある観音様ばかりですねえ」
「そりゃ、よかった。あそこからは、富士山が見えるでしょう」
16観音は三門のいちばん高い場所にあり、ベランダのようになった外廊下に出ることができる。
「残念ですが、雲に隠れていました」
「そうかあ。雲に隠れていましたか。晴れ渡った日には、富士山がきれいに見えるんだけどなあ」
いつも富士山が見える明野に暮らしているとは、言えなくなる。
「また、来ます。富士山が見えるときに」
「そうですね。ぜひ、いらしてください」
そんな会話を交わしながら、胸のなかでうなずいていた。
山梨の「おもてなし」のキーとなるもの、それは富士山だ。
ここからは富士山が見える。それは自慢でもあり、ぜひ見てほしいというもてなしの気持ちでもある。そんな共通の思いを短い会話から感じて、ふわりと和やかな気持ちになった。
紫陽花とお寺って、似合いますよねえ。
色が変わる途中の紫陽花。可愛い。
ガクアジサイも素敵ですよね。
紫陽花に囲まれた道を散策して、リフレッシュしました。
☆『地球の歩き方』北杜・山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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