食べる気はないが、庭のあちらこちらに様々なキノコが生えている。
一応、キノコ図鑑はハンドブックサイズのものを持っているのだが、写真を見てもまったく区別がつかない。
「わ、これ毒ありそう」
と思ったものが椎茸だったりして、庭のキノコは絶対に食べないと決めている。
ただただ、眺めるのみである。
何もないところから、にょき、にょきっと顔を出すキノコたち。不思議だ。
無論、キノコ菌がそこにあるわけで、何もないわけではない。
しかし、と思う。
人間だって、何もないところから命を授かる。
ひとりひとりに「心」なんていう宇宙のように無限大に測り知れないものまでついてくる。
にょき、にょきっとと、今この瞬間にも、どこかでキノコが顔を出し、誰かが命を授かっている。不思議だ。
いちばん大きな笠がひっくり返ったキノコ。
いちばん小さなオレンジ色が可愛らしいキノコ。
石づきが長く伸びたキノコ。
砂利の上に顔を出したキノコ。
食べられそうにも見えるキノコたち。
苔の水分をたっぷり吸ったキノコ。
色違いで並んでいたキノコ。
けろじ、そろそろ、カラッと晴れてほしいんだけど。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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