夕方、窓から夕焼けが広がっているのが見えて、外に出た。
西の空というより南から北の空まで、赤く橙にピンクに紫に、染まっている。
「こんなにきれいな夕焼け、久しぶり」
しばし西の空を仰ぎ、放心した。
家の前からだと、西側には南アルプス連峰が連なっている。夕日はそこに落ちていき、夕焼けは山々の向こうに広がっているように見える。
しかし山の向こうから見たら、逆にこちら側に夕日が沈むわけではない。
そのさらに西、中央アルプスに夕日は沈んでいくのだろう。南アルプスの向こうに暮らす人たちも、今こうして夕焼けを見ているだろうか。空は同じように、赤く橙にピンクに紫に染まっているのだろうか。そしてさらにその向こうには、北アルプスがある。中央アルプスの向こうに暮らす人たちもまた、北アルプスに沈む夕日を、夕焼けを見ているのだろうか。
きっと今、いつもの夕暮れ時よりも西を向いている人が多いだろう。みんなそろって西向いて、ただただ夕焼けがきれいだと思う。そんなふうに何の計算もない気持ちを共有できるって、じつは滅多にない素敵なことなのかも知れない。
我が家の前から見た南アルプスの夕焼け。太陽光パネルにも映っていました。
アップにして左から、鳳凰三山の地蔵岳から甲斐駒ヶ岳。
薬師岳、観音岳、地蔵岳と並ぶ鳳凰三山。だんだん色も変わっていきました。
暮れていく空の色に、センチメンタルな気分になりますね。
『空の名前』を開くと、夕暮れ時の空の名がいくつも載っていました。
「黄昏(たそがれ)」誰そ彼はと、人の顔も見分けられない時間。
「夕」「夕方」「夕まし」「夕間暮れ」「夕焼け」
「夕映え」夕日の光を受け、周りのものが美しく輝いて見えること。
「茜空」「茜雲」アカネ科の蔓草の根で染めたやや沈んだ赤色の空や雲。
「薄明(はくめい)」太陽が沈んでからしばらくのあいだの薄明るい時間。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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