リビングに、分厚く重い図鑑が1冊置いてある。
『日本の野鳥 羽図鑑』だ。
末娘が小学生の頃、野鳥の羽を拾っては集めていた。彼女のものだが、今はもう『羽図鑑』を持っていたことすら忘れているかもしれない。
久しぶりにその図鑑を開いたのは、庭にカワラヒワの羽が落ちていたからだ。猛禽類や猫などにやられたのだろうか。10枚ほどの羽が散らばっていた。
明るい黄色が独特なので、すぐにカワラヒワだとわかったが、図鑑に描かれた絵とまったく同じだった。たぶん、尾羽だ。
見ていると「野鳥図鑑」にはない記述があり興味深かった。
全身がオリーブ褐色だが、風切羽は濃褐色で根元が黄色いので飛翔すると幅広い横帯がはっきりと出る。しかし三列風切羽の外縁部は灰白色で翼をたたむとそれが線となりよくわかる。
風切羽は、翼を広げたときに使う飛ぶためにもっとも必要な羽で、三列風切羽は、その身体側、脇の下のような場所の羽で、翼を広げたときの姿とたたんだときの様子の違いがかかれている。
ちなみに『トリノトリビア』によると、向日葵の種への執着がいちばん強い野鳥だそうだ。
カワラヒワのくちばしは、縦にも横にも太くて丸っこい形です。とはいえ先端はちゃんと尖っています。堅い種を割って食べるのに必要な力強さと、繊細な切断作業をこなす能力を兼ね備えた形だと思われます。
たしかに。
と思うのは、シジュウカラやヤマガラはくちばしだけでは歯が立たず、持っていって木の枝にぶつけて向日葵の種を割り食べている。けれど、カワラヒワはその場で落ち着いて食べる。
『トリノトリビア』で漫画にもあった通り、シジュウカラなどはカワラヒワが餌場にいると木の枝から様子をうかがっていて、飛び去るまで待っている。
そんな我が物顔で向日葵の種をついばんでいるカワラヒワだが、落ちた尾羽の向日葵にも似た黄色が眩しく、哀しかった。
庭先ですら、日々弱肉強食の世界が繰り広げられているのである。
庭に落ちていた、カワラヒワの羽です。
以前、夫が撮影したカワラヒワたち。
怖そうな顔をしていますが、仕草が可愛い。
『日本の野鳥 羽図鑑』です。
カワラヒワのページです。
『トリノトリビア』にも、1エピソードだけ、載っていました。
シミルボンサイトで連載中。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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