夕刻、町内の薬局まで車を走らせた。
車窓から、片側だけ夕焼けに染まった富士山が見える。
ちょうどきれいに見える場所を通ったので、車を停め、写真を撮る。
西側を赤く染めた富士は、静かに物思いにふけり、何か特別なことを思い出し、ふと頬を染めたかのように見えた。
所用を済ませ、来た道を引き返す。
すると、やわらかに頬を染めていた富士は、すでにモノクロームの世界に沈んでいた。眠っているかのようにも見える。
ほんの10分くらいの間に、夕刻という時間は、するりと夜の扉を招いていた。
正面には、満月かと見まがうほどにくっきりと丸い月が茅ヶ岳の右上に浮かんでいる。
実際には、今夜18日の夜が今年初めての満月「ウルフムーン」なのだが、それが何? と言わんばかりに昨夜の月は明るく輝いていた。
そしてその月も、約10分ほどの帰路を走る間に静かに雲に隠れていった。
今ここで見えるものは、今ここでしか見えないものなのだ。
富士と月が微笑んでくれていなかったら、夕刻のドライブはたぶん記憶にも残らない、用事を済ませるためのみの往復になっていたに違いない。
町内の三村橋(さんそんきょう)から望む富士。
橋の上から見ると、障害物なく見えることが多いです。
蛍光ペンで塗ったみたいな色ですね。
帰りに見た茅ヶ岳のうえに浮かぶ月。
どう見ても満月に見えるけれど、ウルフムーンイブだったんですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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