北海道から戻ると、秋の気配が色濃くなっていた。
山椒の実が、真っ赤に熟れ、はぜて黒く光る種が顔をのぞかせている。
移り変わりに戸惑いをみせているようなこの頃の季節だが、やはり大きな流れには身を任せるしかないらしい。
こんなふうに季節の境目がふと目に見えるかのような瞬間に立つたびに、ああ、と思う。ああ、時間は今も動いている、歴史は今日も、今このときにも作られていくのだ、と。
去年と同じく赤くなった山椒の実。しかし木はわずかだが大きく育っている。単なる繰り返しのようでいて、まったく同じことの繰り返しというわけではない。
それは、山椒の赤い実を見つめる「今」が、これまでにはない、新しいものだということを教えてくれる。
不意に、繰り返しのループのなかから外れたような、ひどく頼りない気持ちになる。輪のなかから飛び出したわたしは、いったいどこへ向かっていくのだろう。
不安な気持ちになりながら、けれど、新しい「今」を生きていくしかない。
秋の始まり。赤く熟れた山椒の実は、そう告げていた。
鮮やかな赤です。
全部摘んだと思っていたのに、けっこう残っていました。
種がはじけているものも、いくつかありました。この赤い部分を乾燥させてミルで挽けば、山椒の粉になってスパイスとして使えるそうです。やったことないんだけど。
☆旅してきたばかりの北海道の大きな地震に胸を痛めています。
亡くなられた方のご冥福をお祈りしますとともに、被害が最小限でありますようお祈りしています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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