きのうの夕刻、仕事を終えて外へ出ると、風花が舞っていた。
八ヶ岳も南アルプス連峰の山々も、厚い雲に覆われ、山の上では雪が降っているのがわかる。それが木枯らしに乗り、舞ってきたのだろう。
木枯らしは凍っていたが、風花なら積もる心配はない。
「きれいだな」
思わず微笑んでひとりごち、眺めるだけの余裕もある。
所用から戻り、久しぶりに『空の名前』(光琳社出版)を開いた。
空の写真図鑑のような本である。「氷の章」に雪の名前がいくつも載っていた。
「粉雪」「綿雪」「牡丹雪」「風花」「新雪」「細雪(ささめゆき)」
六角形の結晶を持つ雪は、古くから「六花(りっか)」「雪華(せっか)」とも呼ばれてきたそうだ。
「風花」は、群馬県では「吹越(ふっこし)」と呼ぶ、ともある。「風花」の方がロマンティックな名前だが、八ヶ岳おろしに混じる雪の粒は、「吹越」という名が合うようにも思う。
「星のささやき」なんて言葉もある。
ソ連のヤクートでは、屋外の気温が氷点下40℃位まで下がると、大気中の水分が全て結晶となって氷霧(こおりぎり)が発生し、町中がミルクの中に入ってしまったように見えるそうです。そして氷点下50℃ともなると、人の吐く息さえも凍ってしまい、かすかな音となって耳に届くそうです。土地の人は、これを星のささやきといっています。
こんな環境で生活している人もいるのだ。
「ダイヤモンド・ダスト」や「雪の華」にしても、厳しい寒さのなかでその美しさに目を向け、美しい名前を連想する人の心に感銘を受ける。
「雪」という漢字の「ヨ」は「彗(ほうき)」からつけられたとか。彗で掃ける雨という意味らしいが、真っ白な雪景色を見て「天が世の中を(彗で)掃き清めた」と思ったから、なんて説もあるそうだ。
星はささやかないけれど、ここ明野にも凍った冬がやってくる。
写真では風花は見えませんが、青空の下、舞っていました。
我が家の前の道から南アルプス連峰が見えるんですが、きのうはこんな感じに山は吹雪いていました。
韮崎に出る途中で撮った富士山。雲と遊ぶ姿が荒々しい感じです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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