庭の桜が、咲いた。
今年の陽気はおかしいと思っていたが、桜の木も気だるい夏を過ごしたのだろう。まだ若い木なので、ちら、ほら、といった感じで、遠慮がちに花をつけている。華やかさは、それほどない。
「咲いちゃった」と、悲し気につぶやいているかのようでもある。
それでも、美しい。
こういうとき、ちょっと誰かに話したくなる。
大事件ではないけれど「誰かに話したくなること」という範囲に収まる出来事が日常にはままあって、誰にも言えないとむずむずするような感覚に陥る。
子供がさっき見たことを母親に言うのと同じような、甘えにも似た感覚だ。
だからたぶん「誰か」は、誰でもいいというわけではない。
話したときのリアクションが想像できる人のなかでも、くだらないことだと否定しない人。つまりは、受けとめてくれる人ということになるだろう。
とりあえず「アオゲラが、北側の壁つついてた」というのとセットで、夫にLINEした。アオゲラの件は、「誰かに話したくなること」とはまったく色合いが違ってくる。
懸案事項の報告、確認、備忘録であり、やれやれ蜂の巣が一段落したと思ったらまた一難かと気が重くなるばかりで、決して話したいことではないのである。
10ほど咲いているでしょうか。
白と濃いピンクが同じ木に咲いていました。
春にもこんなに濃いピンクにはならなかったのに。
ちょっと淋し気だけど、きれい。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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