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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

見えない轍

雪は、それほど積もらなかった。

しかし朝6時半。道は凍っている。

「あれ? まだ、轍(わだち)ついてないね」と、夫。

「ほんとだ。まだ誰も通ってないんだね」と、わたし。

田舎の朝は早く、早朝でも通常は車の往来がある。雪の朝も、轍がついていない道を見るのは、そうとう積もった朝に限られる。珍しいことなのだ。

「下る? だいじょうぶそうだよね」

いつもの急な坂道を下るか、遠回りしてなだらかな道を行くか。

轍があればそれを指針にできるのだが、それがまったくないとなると一片の不安が脳裏をかすめる。

「同じ轍(てつ)を踏む」は、悪い意味に使われることが多い。先人のゆく道を見て、同じ過ちを繰り返さないようにと使われる言葉だ。

だが雪道に続く轍は、先人が通り過ぎた証。だいじょうぶ、通れるよという通行許可証のように思え、安心して進もうという気持ちになる。

 

それでも轍のない道を行くのは、なかなかに気持ちのいいものだ。轍がないのなら自らの判断に任せるしかないと、ゆっくりと下った。

通った道の後ろには、そろそろと轍が伸びていく。

「雪があるから見えるけど、雪がなかったら轍も見えないんだよな。雪のないときにも、いつもこうして見えない轍を残しながら進んでいたんだ」

ふとそんなことを、考えた。

考えてみれば生まれてこの方、長い旅をしてきたものだと数え切れないほどの轍と足跡を思い浮かべ、不意に遠くへ来てしまったような心持ちになった。

CIMG4294轍のない、東側に伸びる道です。道路の雪は、うっすら。

CIMG4296西側には、わたしが行って帰った轍だけがついています。

CIMG4298向こうには、雪のさなかにある南アルプス連峰が見えていました。

CIMG4302庭に積もった雪も、すぐに解けるでしょう。

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  1. ユミ より:

    さえさん、遅ればせながら
    お誕生日おめでとうございます!
    GO! GO!精神で、さえさんらしく前進して、悔いのない一年にしてくださいね。

    うちの主人も13日誕生日でお祝いしようと計画していたんだけど、この大寒波で大雪になったため、今週末は帰ってくれなかったんです。
    いくらスタットレズタイヤ履いてても、轍のないような雪の道を通るので怖いって言ってます。
    轍って普段は使わないけれど、改めて聞くと、いい言葉ですね。
    誰もが見えない轍を残しながら、毎日を繰り返しているんですね。
    コブクロの轍を口ずさんでいます。(^^♪

  2. さえ より:

    ユミさん
    ありがとうございます♩GO!GO!でがんばりまーす!
    ご主人もお誕生日おめでとうございます。少年性の強くてクールな、ちょっと変わり者の(笑)わたしとおなじみずがめ座ですね。
    お帰りになれなくて残念でしたね。でも安全第一。スタッドレスでも四駆でも、雪道は怖いですよ~。
    コブクロの『轍』いいですよね~♩末娘がコブクロ好きでよく聴いていました。

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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