家が揺れ、夜中に何度も目が覚めた。
地震ではない。強風にぐわんぐわんと家が揺すられていたのだ。
朝先に起きていた夫が、たいへんなことになっていると窓の外を指さした。
「夜中に大きな音がしたよね。薪が崩れたの?」
「そんなもんじゃないよ」
見ると、赤松が庭の真ん中に向かってまっすぐに横たわっていた。
枯れた松があまりの風の強さに立っていることができなくなり、根こそぎ倒れたのだ。
間一髪だった。
赤松は、庭木や軽トラ、薪小屋にも、もちろん家にも当たらず、きれいにそれらの隙間にすっぽりと収まるように倒れていた。
背筋が凍った。
風向きが少しでも違っていたなら、家が壊れ大惨事となっていたやもしれない。
間一髪【かんいっぱつ】(一本の髪の毛の幅ほどのわずかな隙間の意から)物事の非常に差し迫っていることの例え。危ないところ。
精選版 日本国語大辞典より
まさに、間一髪。
赤松は、用意された〈1本の髪の毛ほどのわずかな隙間〉に吸い込まれるようにして倒れたのだった。
これです。
根こそぎ倒れていました。
倒れた赤松は庭に向かって。
いろいろなものを避けるようにして、ど真ん中に。
一昨日は、晴れていた八ヶ岳。
権現岳。
きのうは、風花舞う八ヶ岳おろしを吹かせる雲に覆われていました。
西側にそびえる南アルプス連峰は、きのうも晴れていました。
見守ってくれているような甲斐駒ケ岳。
鳳凰三山には、雲ひとつなく。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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