ウッドデッキに置いたアウトドア用の折りたたみ椅子に、けろじがとまっていた。
蛙が「とまる」という表現はどうかとも思うが、椅子の背もたれの傾斜に、上を向きポツンととまっている。
椅子は布製で、丈夫だが強い風が吹けば、揺れ、なびく。けろじのいる場所は、とても不安定で頼りなく見えた。
しかし、と考える。
けろじほどの身体の大きさで体重計の針も動かぬほどの体重なら、そこはしっかりと固められたアスファルトの地面と変わらないのかも知れない。
わたしだって、踏み固められた安心できる場所で暮らしていると思っていても、なにかとんでもないことが起こればどうなるかわからないのだ。
そう思うと、頼りなさが切なさの色を帯び、じっとけろじを見つめずにはいられなかった。
茶色がかったけろじは、ただブラウンの椅子と同化し、羽虫などをゲットできる場所を選んでいたのだろう。
翌朝には、だいじょうぶだよとでも言うかのように米粒ほどの糞を残し、姿を消していた。
この椅子の背もたれ右手です。古くて破けています。
けっこう急斜面。
でも、まったりくつろいでいる表情です。
あ、陽が当たってきちゃった。
どうする、けろじ?
午後、出かけて帰ってくると、ちゃんと移動していました。朝から夕方までいたよ。
翌朝にはいなくなっていました。この子は別のけろじだね。顔が違うもんね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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