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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『消滅世界』

「日本の未来を予言する傑作長編」と裏表紙の紹介文にある。

「まさか、そんなことはあるまい」としか思えない。

 

そこは、人工授精で子どもを産むことが定着した世界。

人間同士の恋愛は珍しくなり、アニメキャラクターなどと心を通わせる恋愛が多数派となる。結婚し子どもを育て家庭を築くことはあっても、夫婦間の性行為は「近親相姦」であり、犯罪とみなされた。

主人公、雨音(あまね)は、「最後のイブ」と恋人が言うように「両親がセックスした結果」生まれてきたという”珍しい”生い立ちを抱えている。

「お父さんとお母さんはね、とっても好き合ってたの。恋に落ちて結婚して、愛し合ったから雨音が生まれたのよ」

そう聞かされて育った雨音は、しかし母親への嫌悪に苛まれながら、”普通”に結婚し、夫以外の人やキャラクターとの恋愛を重ねていた。

だがある失恋をきっかけに、夫婦で実験都市である「楽園」へ移り住むことを決める。そこでは、生まれた「子供ちゃん」すべてをセンターで管理し、そこに暮らす大人は男女関係なくみなが「おかあさん」となる。

「家族(ファミリー)システム」は、知能が高い動物には不向きな繁殖システムであることは、各研究所の論文により証明されています。「楽園(エデン)」では、全員がすべての「ヒト」の子供であり、「おかあさん」です。まるで、アダムとイブが禁断の果実を食べる前にいた、愛に満ち溢れた世界のように。

恋愛やセックスで誰も傷つくことのない清潔な世界。雨音はそこで、みんなの「子供ちゃん」ではなく、自分の子どもを育てようと試みるのだが。

 

きのうのニュースで、ノーベル平和賞を受賞した女性活動家のナディア・ムラドさんのインタビューを聞いた。自らも被害を受けながら、ISの性暴力を告発した勇気ある女性だ。

「虐殺や性暴力を終わらせるためには、国際社会のさらなる努力が必要だ」という内容だった。

戦時下での性暴力は住民に恐怖心を植え付け、支配する手段として使われているという。コストの安い「戦争の武器」なのだそうだ。ニュースは、今もまだ1,000人以上の女性が拘束され、被害を受け続けていると報じていた。

 

果たして、今の世のなかと『消滅世界』の楽園と、どちらが正常なのだろう。天音は、言う。

「洗脳されていない脳なんて、この世の中に存在するの? どうせなら、その世界に一番適した狂い方で、発狂するのがいちばん楽なのに」

解説「彼女の異性愛主義の闘いに置いては『発達障害』に支援せよ」は精神科医で批評家の斎藤環。

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PROFILE

プロフィール
水月 さえ

随筆屋。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

夫が営む広告会社で経理を担当。

2012年から随筆をかき始める。

 

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。

 

『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

随筆かきます。

 

依頼はメールフォームからお願いします。

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