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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

取り巻く印象と、真実の姿と

若竹七海の葉村晶シリーズ最新刊『錆びた滑車』を読み、やられた! とラストで思ったのは、よくいうどんでん返しとは感覚が違う。

ずっと他者から見た情報や印象だけで描かれていた登場しない登場人物が、じつは描かれていた印象とはまったく違うのだと突きつけられたのだ。

 

2つの小説を思い出した。ひとつは『悪意』。東野圭吾の言わずと知れた「加賀恭一郎」シリーズだ。

「悪意」ひた隠しにする犯人、野々口は、ある仕掛けをする。まるで、殺された日高が悪人だったかのような印象を加賀に植えつけた。小説家である犯人は、手記をかいたのだ。

相変わらずにやにやしながら窓の外を眺め、コーヒーを飲み干してから、ぽつりといった。「俺がやったんだ」「えっ?」彼のいった意味が咄嗟にわからず、訊き直した。「何だって?」彼はコーヒーカップを机に置き、かわりに煙草とライターを取った。

「俺が殺したんだよ。毒ダンゴを庭に仕込んでおいたんだ。まさかあれほどうまくいくとは思わなかったがね」

野々口は、犯行とは直接関係のない猫殺しの話をでっちあげることにより、日高が殺されてもしょうがないような奴だったと印象づけたわけだ。もちろん加賀は、事件の裏側をもしっかり解くわけなんだけど。

 

もうひとつは『陽気なギャングは三つ数えろ』。伊坂幸太郎の4人の憎めない奴らが強盗劇を繰りひろげる「陽気なギャング」シリーズの3冊目だ。

久遠が言う。
「たとえば、目の前でおばあちゃんが転んだとするでしょ。その時、急ぎの用があって、やむを得ず、通り過ぎちゃうことがあったとすると、だいたいの人は、こう思うんだ。『私はそんなに悪人じゃないんだ。今はたまたま急いでいるだけで仕方がなかったんだ』って」
「まあ、嘘じゃないだろうな」響野がうなずく。
「でも、それが他人の場合、誰かが転んだおばあちゃんを無視して、先に行っちゃったのを見るとね『あの人は冷たいんだ』と決めつける。ようするに、他人に関しては、一場面の行動を見ただけで、性格や人間性まで決めつけちゃうってことだよ。裏の事情までは考えない」
「確かにそうね。相手の事情をもっと想像してあげるべきね」
雪子もうなずく。

『錆びた滑車』を読み、人というものの周囲には取り巻く印象があり、それは真実とは異なるのだということをあらためて考えたのだった。

まったく違うタイプの小説ですが、どれもミステリー。

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PROFILE

プロフィール
水月 さえ

随筆屋。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

夫が営む広告会社で経理を担当。

2012年から随筆をかき始める。

 

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。

 

『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

随筆かきます。

 

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