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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『くちなし』

7編からなるこの短編集は、直木賞候補になったそうだ。帯にはこうある。

常識にとらわれない7つの”愛”が、あなたの世界を変える。

『くちなし』

十年不倫してきたアツタさんに別れ話を切り出され、ユマは彼の腕をねだった。指や腕を交換したりプレゼントしたりできる世界。やがて彼の妻が腕を取り返しにやってきた。

『花虫』

〈私〉は運命の人ユージンと出会った。運命の相手と出会うと身体のどこかに咲く花が見える。初めて花が見えた相手だった。しかしある日、その花の正体が科学者によって暴かれる。

『愛のスカート』

美容師のミネオカは、いまだ忘れられない高校の同級生と出会ってしまう。彼、トキワは人気アパレルブランドを立ち上げたクリエイターとして成功していたが、叶わぬ恋に落ちていた。

『けだものたち』

〈私〉の同僚スグリは、酔うと白蛇になる。女は夜暗闇のなかで働き、男は昼日の光の下で生きる世界では、夫婦となってもすれ違いの日々。蛇や虎、ムカデなどけだものに変身した女たちは暗闇のなか自分を裏切った男を食べにいく。

『薄布』

アザミは、北から逃げてきた子どもシナモンのもとへと足しげく通う。金を払い彼を自由にできる時間を買っているのは、夫と息子に相手にされなくなった淋しさからだった。

『茄子とゴーヤ』

ひとりになってから怠惰になったツグミは、久しぶりに髪を切ろうと思い立つ。どうせならこれまでの自分じゃなくなりたいと茄子色に染めることにした。3か月前に夫は死んだ。不倫相手を助手席に乗せた車で事故を起こして。

「好きだから、私が持っているものはぜんぶあげたの。アキラさんだけじゃない。ノアにもハルカにもぜんぶあげた。毎日ごはんを作って、洗濯して、アイロンかけて、お弁当も作った。お米を研ぐから、ネイルはできなかった。肉も魚も、三十年間ずっとはしっこしか食べてない。セックスもちゃんとしたよ。いい奥さんでいいお母さんになろうとした。ぜんぶあげた。ほんとうに、全部」

「……馬鹿な子だねえ。そんなことで、浮気性が治るわけないじゃないか」

「うん、治らなかった。むしろどこかで加速した」

『山の同窓会』

女は3度産卵し20代で最期を迎えるのが普通である世界。ニウラは発情も交尾も産卵も欲しない自分をおかしいとは思わないが、親友ももと同級生たちも彼女に憐れむようなまなざしを送ってくる。

 

たしかに、どれも風変わりな”愛”の物語だ。

ファンタジーではない2話『愛のスカート』と『茄子とゴーヤ』がとりわけ好きだった。

『愛のスカート』は、主人公ミネオカも、彼女が愛するトキワも叶わぬ愛を抱えているが、その愛の形を受け入れている。それは清々しく潔く、とても素敵に思えた。

高校生直木賞というのがあるんですね。受賞作でした。表紙絵は、花虫かな。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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