過去は変えられる。
その発想が、新しかった。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
洋子と初対面のとき、蒔野が口にしたセリフだ。
ひとつの「過去の出来事」が、明日起こったことによって自分のなかで形を変える。たしかにそういうことって、ままある。
そんな会話からふたりが魅かれあっていったのも、必然だったのだろう。
11月頭に公開される映画『マチネの終わりに』の原作文庫である。
〈cast〉
蒔野聡史【福山雅治】 天才ギタリスト
小峰洋子【石田ゆり子】 国際ジャーナリスト
東京、パリ、イラク、ニューヨーク。遠く離れて暮らし、たった三度しか会っていないふたりだが、魅かれあう胸のなかの炎を消すことはできなかった。
ふたりが恋に落ちていく描写は、とても素敵だった。
蒔野は、コンビニで一円玉が反り返ったレシートに弾き飛ばされたことさえ洋子に話そうと思い、気づく。
世界の意味が満ちるためには、事物がただ、自分のためだけに存在するのでは不十分なのだと。
洋子もまた、スカイプやメールでの他愛のない会話が楽しくてしょうがなかった。
小説を読んでいると、ふたりが魅かれあうさまはあたかも〈運命の人〉との出会いのように思えるが、日常のなかの小さなことごとを共有したいと思う気持ちは、極々普通で、いや逆に普通過ぎて、今日の出来事を話せる相手がいることの幸せに、あらためて気づかされもした。
しかし運命は、ふたりのすれ違いを楽しんでいた。スマホを駆使できる現代においても。
よくよく考えてみれば、わたしたちの日常においても、いくらスマホで連絡をとりあっても心がすれ違っていくことはある。
蒔野と洋子のすれ違った〈過去〉は、変えられるのか。
丁寧過ぎると驚くほどの心理描写に加え急展開が続く構成。一気読み必至の恋愛小説だった。
ブルーとイエローの表紙に、なぜか『冷静と情熱のあいだ』を思い出しました。
こんばんは。
この数ヶ月ラジオ深夜便に原作者の平野啓一郎さんが出ていて、この小説のことも話しておりました。
彼は赤ちゃんのときにお父さんを亡くし、母親のふるさとで幼い頃を過ごしたようです。
とても頭の切れる人だな~と思いました。
安易に相槌は打たない人という印象も持ちました。
11月が楽しみですね。
『冷静と情熱のあいだ』も夢中になって読んだ小説です。
イタリアが舞台でしたね。
さえさんがブログで紹介してくださった森に眠る魚 あと少しで読み終えます。
丁寧な心理描写、うんうんそうだねと相槌を打ちながら読みすすめています。
私は他の母親と群れて行動するのが苦手、というよりも好まなかった母親でした。
それでも子供が幼稚園の頃は子供と一緒の行動だったのでいろいろありました。
今はこの小説を読みながら懐かしさを覚えています。
年をとったということですね。(笑)
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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