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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『リバース』

湊かなえのミステリー『リバース』(講談社文庫)を、読んだ。

先週からTBS系列でドラマが始まったばかりだが、帯にある「最後の一行を規定して描かれた小説」に、ドラマではなく小説を読まなくっちゃと手にとった。

 

主人公、深瀬和久は、事務機器メーカーに勤めて2年目。不器用で平凡なサラリーマンだ。取柄といったら美味しい珈琲を淹れることだけ。会社でも、深瀬じゃなくちゃダメって仕事はこれといってなかったが珈琲を淹れることだけは任されていた。楽しみは「クローバー・コーヒー」に通うこと。そこで知り合った越智美穂子と恋仲になる。平凡ななかにあり、彼にとっては順風満帆のこの頃だったのだが、ある日美穂子の勤め先に告発文が届く。

「深瀬和久は人殺しだ」

深瀬は大学時代、ゼミ仲間5人と行った信州で友人、広沢由樹を亡くしていた。自動車事故で、しかしその事故は起こるべくして起こったのではないか。その思いは深瀬のなかに重く沈んでいた。

 

ミステリー要素は別にして、この小説のテーマは「死者の本当の姿を、じつは誰も知らなかったのではないか」というところにある。深瀬はそれに気づき愕然とする。そして、親友だと思っていた広沢由樹のことを知ろうと調べ始める。両親や幼馴染み、同級生たち、野球のチームメイトに話を訊き、深瀬の知らなかった広沢由樹が次々浮かび上がってきた。

『広沢由樹は引っ越しのバイトをしていた』

『広沢由樹は家庭教師のバイトをしていた』

『広沢由樹はカレーが好きだった』

広沢由樹は、で始まる文章を書いていく。

同期入社の社員が一人もいない深瀬は、テレビなどで見かける、集団で合宿を行うような新人研修には縁がなかった。そのかわり、社長から課題を出された。

わたしは○○です。という文章を百個書けというのだ。名前、出身地、趣味、星座、血液型、その辺りまでは思い浮かぶが、あとは何を書けばいいのかわからない。しあし、考えるあいだにも時間は過ぎていく。苦肉の策として『わたしはコーヒーが好きです』とすでに書いてあるのに『わたしはマンデリンが好きです』と、コーヒーの種類をいくつか挙げてみた。それと同じ方式で、好きな本や映画のタイトルを挙げた。食べ物も挙げた。寿司が好きだと書いた後で、寿司ネタもいくつか挙げ、どうにか百個書くことができた。

深瀬は、広沢由樹を、彼の過去をどんなに些細なことすら見逃すまいと追っていくのだが。

 

わたしは、家族の、友人の、そんな近しい人たちのいったい何を知っているのだろうか。そう自問せずにはいられない小説だった。

ラスト、文句なく痺れた。やっぱり本を読んでよかった。

小説には、武田鉄矢演じる元刑事は出てこない。ドラマはドラマで、また違う味わいを楽しめそうだ。

CIMG6321自分に自信が持てず常におどおどしている深瀬を藤原竜也が、広沢を小池徹平が、美穂子を戸田恵梨香が演じています。

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  1. ユミ より:

    第一話、見ました。
    NHKのドラマ10と、どちらを見ようか迷って、結局両方とも連ドラ予約をして、リバースの方はリアルタイムで見ました。
    本は読んでないので、これからの展開を楽しみにしていますね。
    湊かなえさん、先日サワコの朝に出演されてたんですが、小説から受ける感じとは違って、ごく普通のおっとりとした主婦に見て取れました。

    • さえ より:

      ユミさん
      おんなじです~ドラマ10と両方予約しました。
      ネタバレにならないように気をつけてかきました。ドラマはまったく違う展開になることも多いので楽しみです♩
      わたしも、ちらっと朝の番組観ました。ほんとほんわかした雰囲気の方ですね~イメージ違う!

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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