ドラマ化? わたしの葉村晶が、やっと。嗚呼!
NHKもようやく葉村晶の魅力に気づいたようで、今ドラマ10で「ハムラアキラ」がやっている。
彼女の魅力は、何といってもワイズラック。
「気の利いた皮肉」などと訳されるが、彼女には「洒落た減らず口」という訳がぴったりくる。「減らず口」が多くなるのは、このシリーズが「仕事はできるが不運すぎる女探偵葉村晶」シリーズと呼ばれているからだ。
ハムラアキラはその不運を、減らず口で蹴散らしつつ生きているのである。
ということで、シリーズ最新刊『不穏な眠り』を楽しんだ。
4編から成る中編集だ。
『水沫隠れ(みなわがくれ)の日々』
病で先行き短い老女サツキの依頼は、〈死ぬまでにしたいことリスト〉のひとつ。
「不思議よね。こんなときなのに、見栄を張りそうになっちゃうの。藤本サツキは最後の最後まで人生を謳歌しました、と葬式で言ってもらえるようなことをリストに並べるべきだ、と思ってしまうのね」
「それは例えば、エベレストに登頂するとか?」
わたしが言うと、サツキは優雅に手を打った。
「理解が早いわ、探偵ちゃん」
だが考えた末の依頼は、7年前に縁を切った養女を連れてきてほしいというものだった。
『新春ラビリンス』
新しい年の幕開けだ。いい年でありますように。……いや贅沢は言わない。今年こそ、病院に担ぎ込まれませんように。調査料を踏み倒されませんように。依頼人が死にませんように。なにより、こんなところで凍死せずにすみますように。
幽霊ビルの警備をさせられ凍死寸前だった彼女は、行方不明の作業員を探す羽目になる。
『逃げ出した時刻表』
葉村晶がバイトするミステリ専門書店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉がゴールデンウイークイベントで借りたいわくつきの時刻表が盗まれた。スタンガンで気絶させられた借りもあり、彼女は時刻表を追いかける。
トサキについて知っているのは、SNS上の連絡先だけだと箕輪俊哉は言った。おうちを聞いてもわからない、名前を聞いてもわからない。困ってしまって吠えたくなったが、待ち伏せしていたということは、先方は俊哉の自宅を知っている。
『不穏な眠り』
他人の家に居座り、死んだ女の正体は?
「大丈夫。あなたが首を絞められた証拠は、そこにはっきりありますからね」
塩澤は声を低め、ボールペンでわたしの首をさした。現在、わたしの喉には掃除機のコードの跡が赤黒い一本線となって残っている。周辺にはコードを外そうとしてわたしが自分で引っ掻いた傷、いわゆる「吉川線」があった。縊死が自殺か他殺かを見定めるミステリ好きにはおなじみの方医学用語だが、実物を目にしたのは初めてだ。できれば自撮りして、〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉のSNSにアップしたかった。
そんな晶の減らず口を肴に、推理をグラスに注ぎ、〈死ぬまでにしたいことリスト〉でカラカラとかきまぜた。
シシド・カフカはハマり役でした。ドラマも楽しんでいます。
☆シミルボンサイトで連載しています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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