三度三度キッチンに立つ日々、ケチャップを使うたびにポルトガルの旅を思い出している。
ポルトガルには、ケチャップがなかった。
朝食にオムレツを焼いてくれるホテルでさえ、ケチャップは置いていない。
自称マヨラーでありケチャラーの夫は、さぞや辛かっただろう。(マヨネーズもなかった)
レストランのテーブルには、たいてい塩と胡椒が置いてあり、オリーブオイルやビネガーが並んでいるところも多い。
しかし、ケチャップはない。
肉も魚も野菜も豆もトマトの味つけで煮るものが多いだけに、必要に迫られないのかも知れない。しかたなく朝食バイキングなどでは、白いんげんのトマト煮などと盛り合わせたりした。
「『さむがりやのサンタ』の夏休みバージョンにあったよね」
「あったねえ」
子どもたちが好きだった漫画風にコマ割りになった絵本だ。
夏休みのバカンスにとフランスに出かけたさむがりやのサンタは、ワインとフランス料理を楽しむのだが、ポテトフライもない、ケチャップもないと言われ、だんだん嫌になってくる。
次は、水がきれいなところがいいとスコットランドへ。民族音楽とウイスキーを楽しむが、寒すぎたので次はラスベガスへ。
そこにはフライドポテトもケチャップもあり、プールで泳いで大満足。でもお金がなくなってきて。
というストーリー。
わたしとしては、思わぬところでむかし読んだ絵本のワンシーンに出会い、ちょっとうれしくなったのだけれど。
旅の最終日、たまたま入ったカフェでパニーニをオーダーすると、ケチャップの小袋が出てきて、ふたり歓声を上げた。
最終日、サン・ジョルジュ城の真下のカフェでランチしました。
リスボンの街を見下ろせる高台でした。
サーモンのパニーニを半分こして。
ここで最終日になってようやくケチャップとマスタードが出てきました。うれしい。
街なかにエスカレーターがあったり。
立ち並ぶ家の玄関ドア横に住人の写真が飾ってあったり。
低いドアがあったり。日本にはないものもたくさんありました。
休憩した街なかのカフェは、こだわりのフレッシュジュースのお店。
レモン&ジンジャージュース。濃くほどよく辛く美味しかった。ストローは紙製でした。
店内も洒落ていました。ハンドメイドなんだね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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