先月ポルトガルを旅したとき、とても印象的なことがあった。
特別に何も起こっていないのだが、それはわたしのなかでだけハッとした「事件」とも言える出来事だった。
旅の終盤ポルトで、半日だけ夫と別行動をとった。
わたしはぜひ行きたいと思っていた、世界一美しい本屋とも言われる『レロ書店』へ行き、夫はふらりと散策へ出かけた。
その美しい本屋で、小一時間のときを過ごした。
「何か一冊、欲しいなあ」
そう思いながら、カラフルな写真の料理本や、写真集などを眺めて過ごした。本好きのわたしにとって、心楽しい時間だった。
そしてふと、思った。
「ああ、『星の王子さま』があったらなあ。買っていくのに」
次の瞬間、平積みになっている見覚えのある表紙絵の本を見つけた。『星の王子さま』だった。
そのとき「事件」は起こった。
手にとったその童話を、”ほんとうに欲しいのか”と、心の声が聞こえたのだ。
読めもしないポルトガル語の本をただここへ来た記念にと買っていき、本棚で埃にまみれるさまがありありと目に浮かんだ。
ないものねだり。手に入らないと思うと欲しくなる。
まさに、それだった。
わたしはゆっくりと『星の王子さま』を開き、日本語版と変わらず味のある挿画を眺め、もとの場所へ戻した。
”ほんとうに欲しいものは、何?”
その問いは、旅行じゅうずっとわたしのなかに響いていた。おかげで、ムダな買い物は一切しないちょっと大人な旅となった。
帰国してからも、その問いは続いている。
赤い旗が立っている建物が『レロ書店』です。20メートルくらい入場で並んでいました。入場料は5€。
ドアを開けると、こんなディスプレイと混み合う人々がお出迎え。
木彫りで飾られた柱には、所縁ある人8人の彫刻が飾られています。
「天国への階段」とも呼ばれるアールヌーボーが取り入れられた階段。
レッドカーペットの如く赤い階段は、撮影スポットとなっていました。
本屋さんも美しいけど、本も美しい。うーん、惚れ惚れ。
悪戯っぽい装飾も、ありました。
天井には、洒落たステンドグラス。
写真がきれいなレシピ本を中心に、開いては眺めて楽しみました。
『星の王子さま』は、ポルトガル語版のほか英語版、フランス語版も。『不思議の国のアリス』も平積みになっていました。
こんな本屋さん、一日じゅうでも、居られそうですね。
(言葉がわかれば・・(笑)ですが)
入場料がいるのですね。
ぱすさん
楽しかったです♩
夢の国にいるみたいでした~
東京にも入場料をとってくつろげる本屋さんができたみたいです。行ってみたいな~と考え中です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。